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今起こっている政治のゴタゴタについて①

先日の記事(↓)で、政治のゴタゴタについて書いたのですが、今回はそこでチラッと触れた問題について書いていこうと思っています。

事は2週間前に遡ります。去る5月25日、内務大臣のFernando Grande MarlaskaがGuardia Civil(治安警備隊)のマドリード部隊のトップであるDiego Pérez de los Cobos大佐を解任したことをきっかけにさらなる政治分断劇が始まります(その後ナンバー2の辞任、ナンバー3の解任も立て続けに起こっている)。ちなみに解任の理由は「信用の喪失」とし、はっきりとした説明はされませんでした。

そして、それに伴う形でGuardia Civilが捜査裁判所に提出したとされる報告書の内容も報道されました。その内容はというと、「3月8日の国際女性デーにマドリードで行われたデモ(以下8-M)をはじめとする大規模イベントがコロナウイルスの感染拡大に大きく関係し、3月2日に欧州疾病予防管理センターから大人数が集まる不必要なイベントは中止するようにという注意喚起があったにも関わらず、中央政府も行政もこのデモの開催を容認した」と痛烈に批判をするもので、そこには非常時保健責任者のFernando Simónへの責任追及に関する言及もあったとのこと。そこから政治的中立性に欠ける内容→信用の喪失→Pérez de los Cobos大佐の解任となった、かいつまんでいうとこんな内容の報道でした。

この8-Mをはじめ、3月5日からの一連のイベント開催を中止しなかった責任については、既にある個人弁護士によりマドリードの政府代表のJosé Manuel Franco(*)が3月の下旬に告訴されており、マドリードの第51捜査裁判所長であるCarmen Rodríguez-Medelが調査を開始していたとのことで、Guardia Civilにもその調査協力を依頼していたようです(5月25日の報道で騒がれ始めるまでこんなことがあったとわかっていなかった私)。

* こちらはマドリードの自治州政府とは別の中央政府のマドリード代表

これだけを見ると、Guardia Civilの報告書の内容も政治的中立性に欠けるけれど、それを理由にPérez de los Cobos大佐を解任するのも中立性に欠けると言えるので、こんなことやっちゃっていいの?というのが個人的な印象でした。ただ、どうやら事態はそんなに短絡的なものでもない様子。

まず、マドリードの政府代表のJosé Manuel Francoの責任追及調査からだいぶ時間が経った今になってGuardia Civilによる報告書が明るみになったのは、ロックダウンにより司法をはじめとした全ての機能が最低限のレベルでしか機能せず、外出制限が緩和された段階になって各機関が動き始めたからと考えられます。そして、ここに来てGuardia Civilのマドリード部隊トップの解任とこの報告書とがリンクしたわけですが、実際のところ解任されたPérez de los Cobos大佐はこの報告書の内容は知らされていなかったという話もあり、内務大臣も当初はこの報告書が解任の理由ではなく、元々議題に上がっていたGuardia Civilの給与の平準化と再編成に関連した解任だったと言っていました(とはいえ、信用の喪失の理由がよくわからなかったのも事実)。

その後6月1日に、今度はGuardia Civilのマドリード部隊トップPérez de los Cobos大佐の解任理由が記された文書がメディアにより明るみになります。その内容が「Guardia Civilの調査と行動の進展を報告しないことによる信用の喪失」というものだったため、右派からの攻撃がさらにヒートアップしました。6月3日の議会でも右派からは「今すぐ辞任しろ!」と内務大臣は激しく攻撃を受けることになるのですが、内務大臣はこの報告書をはじめとするメディアへの一連の情報漏洩が解任の理由であることを認めつつ、「情報漏洩は犯罪」「私も私たち組織のメンバーも報告書の中身に興味があったわけではない」「Pérez de los Cobos大佐の経歴を尊重して解任理由を言わなかった」とこちらもドヤ感を醸しながら猛反撃をしました(この議会の模様はたまたま見ていたのですが、ドヤ感を醸しつつも右派を黙らせるには説得力がないかな?というのが個人的な印象。あと、代表者席にいた内務大臣のバックには極右のVOXの議員が控えている状態で、まな板の上の鯉のように映り気の毒な感じもしました)。

現在、内務大臣側はこの情報漏洩問題に関して調査を開始することで反撃の姿勢を見せており、調査結果によってはPérez de los Cobos大佐の解任を取り消すことも考慮に入れている様子(これはこれでどうなの?とも思うが)。

ただ、右派の政党がこの解任劇と8-Mの問題を全てごっちゃにして政権側を攻撃していることには、ちょっと疑問を感じています。8-Mに関しては、女性問題という左派側の政治色が強いイベントで、実際に女性の大臣やそれこそ内務大臣のGrande Marlaskaもここに参加していたこともあり、右派側としては恰好の攻撃の標的とも言えるわけですが、この3月8日には他の大規模イベントも行われていたのに、右派の攻撃もそれこそメディアの扱いも8-Mに集中しすぎているのも気になるところです(ちなみに私はフェミニスト運動には全く興味がなく、8-Mのデモに関しても今回の一連の報道で思い出したくらいなので、特に思い入れはありません)。この解任劇&情報漏洩の問題と8-Mをはじめとする大規模イベントの感染リスク&責任追及の問題は別に考えた方がいいと個人的には思うので、次回は後者の問題に関してもう少し書いてみたいと思っています。

こんなに長々と政治問題について書いておりますが、この問題に関しては毎日様々なニュースが出てきて、さらに内容もどんどん更新されており、さらに難しい問題でもあるので、書こう書こうと思いながら今になってしまった次第。。。つまらないこの政治問題の記事はまだ続きますが、もう少しおつきあいいただければと思います。

* 冒頭の写真は今回の記事とは全く関係ありません。近所の広場の人通りが戻ってきている様子を写したものです。

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