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今起こっている政治のゴタゴタについて③

先日からお伝えしている政治のゴタゴタについてですが、今回も引き続きその話題。前回は、3月8日の国際女性デーに行われたデモ(以下8-M)をはじめとする大規模イベントの開催を中止しなかった責任について、マドリードの政府代表José Manuel Francoが告訴され、そこから始まった一連の流れについてお話ししました(前回までの経緯はこちら↓)

前回の記事は、このJosé Manuel Francoの裁判の前日に書いたもので(裁判の開始は6月10日)、記事にも書いたように裁判の直前になって司法の動きがバタバタとし始めたわけですが、結局のところ、この事例はあっけなく棄却されることで終わりました。

6月10日の夕方、初日の公判を終えたJosé Manuel Francoが待ち構えていた報道陣のインタビューに答えているのを私もたまたまテレビで見ていました。裁判所へも堂々と歩いて現れた模様が映っていましたが、インタビューにも「あの時点で基本的な権利を禁止するにあたる要素は一切なかった」「Guardia Civil(治安警備隊)には大きな敬意を持っているが、報告書の内容には同意しない」とはっきりと答えていました。
翌日の6月11日には、マドリードの州政府、マドリード市の行政に対し裁判所長が報告を依頼し、さらに15人の証人(公務員やデモのプロモーターなど)への質問も行われました。

そして、昨日6月12日、3ヶ月に渡る調査の末(ロックダウン中はほぼ進展がなかったはずなので実質1ヶ月くらい?)、José Manuel Francoへの告訴は棄却されました。もっと時間がかかると思っていたので、ずいぶんあっさりしたものだ、というのが正直な感想。ただ、Guardia Civil、保健省、保険当局、自治体、法医学者など、約3,000枚の書類を精査した上での判決で、「自治体からも保健省からも保険当局からも、これらのイベントを中止する警告はされなかった」「医学的観点から感染拡大との因果関係は証明できない」よって「José Manuel Francoに起因する犯罪行為にあたる十分な証拠はない」という結論に至り、「ただし、この裁判の閉廷は暫定的なものであり、関連情報を受け付けた際には再開される」と裁判所長は締めくくりました。

この一連の話に前から少し疑問を持っていたのは、なぜマドリードの政府代表のJosé Manuel Francoに責任追及がされたのか?ということ。もちろん、そこには保健担当者への追及も含まれてはいたものの、なぜ、自治体、つまりマドリードの州政府(*1)への責任追及がなかったのか?ということ。

*1: こちらは右派のPP(国民党)が実権を握っている。

というのも、この裁判の判決の前には既に別の問題が浮上しており、そのことで政治的な形勢にも変化があったのでした。今週の初めぐらいに浮上したこの問題、実はマドリード州では高齢者住居施設からの急患受け入れの拒否がされ、コロナウイルスによる高齢者の死亡の8割以上がこの急患受け入れ拒否により起こったという話。さらに、「高齢者住居施設からの患者の受け入れについてのプロトコル(基準)」なる書類が存在し、このプロトコルは医療逼迫のピークとも言える3月中旬〜下旬に作成されており、既に明るみになっていたようです(こちらも今回騒ぎになるまで全然知らなかった。おそらくこの時期は知人から頼まれた翻訳の仕事に集中していたからだと思われる。余談ですが。。。)。この急患受け入れ拒否は3月中旬から4月中旬まで起こっていたそうで、その後病院側が落ち着きを取り戻したところで受け入れを再開したとのこと。

このプロトコルの目的は医療崩壊を防ぐためのもので、内容は「余命6ヶ月の終末期にあたる人」「末期癌や重度の神経変位による疾患(アルツハイマーやパーキンソン病など)を持ち、車椅子への移動などが自力でできない人」などとされ、高齢者の健康状態を示す10段階(0〜9)のうち7以上に相当する人のことを指しています。要は、急患受け入れの段階で既にトリアージがされていたということ。これはこれで倫理的にはどうなの?ともなるけれど、あの状況下では仕方がなかったのか、とも思える。非常に難しい問題です。

で、ここからが問題。実は、このプロトコルの範疇だけではなく、単に年齢による急患受け入れの拒否がされていたという実態が明らかになってきており、実際には75歳以上の急患はことごとく拒否されていたという話。さらには、民間の保険に加入していた人に関しては受け入れてもらえたという事実。。。ちなみに、民間の病院にはこのプロトコルは知らせていなかったといい、全ての患者(おそらく保険加入者の患者)を受け入れていたといいます。最終的には公共の病院からの患者も受け入れたといいますが、それでも保険加入者のためにベッドを確保しておく必要があったとのこと。また、受け入れ拒否に加え、高齢者住居施設には人的物的支援(マスク、手袋、薬、検査キット、医者、看護師など)が全然なかったという話もあります。

マドリード州の首相も保健担当責任者(*2)も「このプロトコルは下書きが誤って送信されてしまった」「年齢での判別は一切していない」など、苦しい言い訳をしていますが、これらの実態に関しては遺族の怒りがおさまらないのも事実で、既に200以上の遺族によるマドリード自治州への告訴がされているとのこと。そして、第2副首相のPablo Iglesiasもすかさず彼らに対して「年齢とお金で判別するのか?」と激しく攻撃をしていました(とはいえ、今まで散々政権側として攻撃を受けていたところからの反撃とも取れるので、これはこれでどうなの?と個人的には思うけど)。

*2: 保険担当責任者のEnrique Ruiz EscuderoもPPに所属するマドリード州議員

いずれにしても、今回のパンデミックで医療及び高齢者施設のシステムの問題が露呈した形になっているので、ここはこの先に来るかもしれない第2波に備えて早急に解決してほしいと思っています。ちなみに、スペインの民間の保険会社と病院の図式は現にアメリカの医療体制に当てはまっているもので、実際、スペインの前政権(PP)が公共医療の縮小を進めていたことは事実だし、社会保険の民営化を計画していたことも、政治にポンコツな私でさえ知っているわけで、そうなっていたとしたら?と考えると恐ろしい。。。(この公共・民間という謎の分断型ハイブリッド体制はなんとかならないものだろうか?)
高齢者施設に関しては、実情がよくわからないのですが(健康レベルによる棲み分けがあるのかどうかなど)、特にマドリードは民間経営の施設が多く、入居費も月額1,000〜4,000ユーロとのことで、自治体による施設を増やすべきという専門家の意見も多々上がっています。また、医者や看護師が常駐していないということなので、介護士の方々の負担が大きすぎるという問題もあります(医療的にも精神的にも)。ある施設の責任者は「ここは住居であって病院ではない」と訴えていましたが、本当はもっと医療体制を充実させるべきだったのでは?と個人的には思います。

というわけで、政治のゴタゴタの話から最後は医療体制の問題の話になりましたが、ここまで書いてきて思うのは、今健康であることに感謝して、それを維持できるように日々過ごすことがいかに大事なのかということ。そんなことを思った次第です。

* 冒頭の写真は、近所のカテドラル前の広場。天気が良い!すっかり夏模様。でも、マスクは外せない。。。

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