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勝手に性格を決めつけられた話。

テレビを観ていて鍛冶屋のシーンが出てきた。

思い起こせばあれは24の夏。

当時通っていた習い事の姉弟子さん(たぶん70才過ぎくらいの女性)が、いきなり

 「Momoriさんってお付き合いしている人はいるの?」

と聞いてきたのだ。

ちょうど彼氏募集中だったため、「いえ。」と答えると、

 「いい人がいるのよ。とても素敵な方よ。」

とお見合いを勧めて来たのである。

話を聞くと、鍛冶屋さんの次男にあたる男性がお嫁さんを探しているんだそうな。

帰宅して両親に話すと、どうやら祖父が昔農機具の手入れをお願いしていたところらしい。父は直接そこの人を知らないらしいけれど、なんとなく親近感が湧いたのだろう。会ってみたらどうだ、という話になった。

翌週、お稽古場に行ったら、私の顔を見るなり姉弟子さんが

 「どう?ご両親はOKしてくれた?」

と聞いてきたので、よろしくお願いします、と答えたのだった。


身上書や写真を慌てて用意して、向こうから言ってきたこととはいえ、
一応姉弟子さんに手土産も渡すつもりだったのだが、数日した頃に彼女から連絡が来て、

 「あのね、あのお話、なかったことにしてほしいって。」

と言われたのである。

まあ、お見合いって親や周囲の人がやる気満々で、肝心の本人がその気じゃ無いこともよくあるみたいだしなあ、と思い、「はあ、そうですか」と答えたら、なんと

 「次女はわがままだから、なんですって。」

とおっしゃったのであった。

たしかに私は次女である。

まあ、わがままなところもあるだろう。

けれど、どちらかというと実家の家族の中では長女の姉が強く、私の意見はあんまり取り入れられない傾向があるので、いつも我慢することが多かった。

習い事も、姉が習っているということで自動的に私も習わされ、私が習いたいと思うものは、自力で通える年齢になるまではずっと却下され続けていた。

我が家は自営業のため、母も忙しかった。

学校から帰ると両親が昼食を食べて水につけてある食器を洗い、洗濯物を取り込んでたたみ、冷蔵庫の中の食材が少なくなっていれば母に要る物を聞いて自転車をキコキコ漕いでスーパーに買い出しに行き、夕食の下ごしらえをし、お風呂の準備もした。

一方、姉は体育会系の部活だったため、定期テストの直前以外は部活にいそしみ、たまに家にいる時にはなんとかしてお手伝いを私に押しつけようとしてきた。

私は中学の時は部活にいそしんでいたけれど、母があまり体が丈夫じゃなかったこともあり、高校生になってからはほぼ帰宅部といってもいいような部活に入り、家事のお手伝いをすることが多かった。

それまで自分なりに頑張ってきたのに、会ったこともないのに次女だからというだけでわがままと決めつける人も世の中に存在するということを知って衝撃を受けた。それと同時に、そんなに偏見が強い人とご縁がなくてよかった、とも思った。

それからしばらく経った頃、たまたまお稽古場で私以外の人がいない時に先生が、

 「Momoriさん、もしかして○○さんにお見合い話を持って来られなかった?」

と聞かれたので、正直に

 「ハイ。でも、断られました。私が次女なのでわがままだろうから、という理由だそうです。」

と淡々と答えたら、

 「ひどいわねえ・・・でも安心して。お相手の人はなんやかやと理由をつけて、実際にお見合いになったことがないのよ。難しい人みたいなの。それなのに頼まれているからと、この子は、と思うお弟子さんに声をかけているのよ。本当はこういう場(お稽古場)でそういうこと(お見合いの斡旋)をしてほしくないんだけどね。皆さん不愉快な気持ちになるでしょ。」

・・そうだったんだ。少し気が楽になった。

もしかしたら気を使ってそういった言葉をかけてくれたのかな?と思ったけれど、先生は話を盛る人ではないので、たぶん○○さんはそういう人なのだろう。

まあ、『この子なら・・・』と思ってお見合い話を下さったことだけ喜んでおこう、と思うことにしたのだった。











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Momori
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