エリアデザインラボ#4
1.アカリが実践しているビジネスモデル
第4回目のエリアデザインラボは、前段でアカリことを説明した後、Trattoria da Martinoの渋谷朝洋(しぶやともひろ)シェフからお話をお聞きしました。
私たちが、アカリをつくる際に、地域の課題として捉えたのは、「地域に暮らす子供達に対して、多様な人との出会い、多様な文化との接点が希薄であること」です。地方出身者で都市部に就職していった人の中に、地元に帰りたいと考えた人がいたとしても、地元に知り合いがいない・関わりしろがない・新しいことが生まれる気配がないなど、自身の居場所を見つけられない状況に陥ってしまいます。
そこで、アカリを作ることによって、多様な人たちとの接点をつくり、価値観の交差点のようなものを生むことにしました。この場所での出会いの中から、新たな気づきを得て、自分の中に何か”灯るもの”を見つけてほしいと願っています。
自分の中の興味のあることや好奇心に、正直に生きることによって、自分の中の多様性を育んでくれた地元に対してのシビックプライドが醸成され、定住人口とはならなくとも、関係人口のような形で地元に関わり続けてくれる人材に育っていくと信じています。
また、アカリで実践しているビジネスモデルは、国見町のように人口1万人未満の小さいまちでも着実に機能するモデルで、誰も損をしない独創的なモデルを構築しています。
アカリの建物はもともと国見町が所有していた書庫で、年間約100万円の維持管理費がかかっていました、ここを弊社でお借りして事業化することで、町に100万円近い賃料をお支払いしています。また、この削減した維持管理費や、弊社で支払っている家賃は、その後町の教育事業に充てられます。そのため、地域内でお金が循環することに加えて、人材育成が実践され、その人材がまたアカリの事業に関わってくれるサイクルができているのです。
2.食材に旅をさせないシチリアの食文化
アカリに併設されているTrattoria da Martinoの渋谷シェフに気になっていたことを質問してみました。
Q)なぜシチリアを選んだのですか?
A)経営的な戦略と、文化の面白さからシチリアを選びました。日本には、イタリアンのお店も多く、日本人にも人気があるため、福島で見ても、一般的なイタリアンレストランは飽和してきているように感じていました。福島の中でも、イタリアの1つの州に特化した人気のレストランもあるので、そことも別の州を選びたという点もありました。また、調べてみると、マグロやタコやウニなどを好んで食べる食文化でもあり、日本人の感覚と近いことも魅力でした。
Q)なぜ出店場所として国見を選択したのですか?
A)シチリアで学んだ食文化として、最も大切にしていることが、「すぐ近くの畑から採れた野菜や、近くの漁港から水揚げされた新鮮な海産物を使う」ということでした。そのような、食材に対する想いを実現するには、気の知れた農家さん達のいるエリアに出店する必要がありました。そのため、国見という行政区はあまり意識しておらず、知り合いの農家さんが多くいる場所がたまたま国見周辺だったということで選択肢に上がったという感じです。
Q)近くにある食材や、旬のものをつかった食材を使った方が美味しいはずなのに、なぜ日本では発展しないのだと思いますか?
A)1番は料理人のスキルの問題だと思います。旬の食材や、新鮮な食材を使うということは、天候などの不確定要素を含むことになるため、食材が手に入る時期が定まらないことを意味します。食材に合わせたメニューの考案や、考えていた食材が手に入らなかった時の代用を考えることなど、食材の都合に合わせた調理が必要になります。特に、複数店舗を経営している飲食店オーナーや、ナショナルチェーンなどは、1つのメニューを考案したら、同じメニューを多店舗で量産する必要があります。そのため、食材の都合に合わせた料理人の対応が難しいのだと思います。
Q)今後の事業展開について教えてください
A)事業展開というよりは、まずは目の前の1皿をより良くするためにはどうするか、という点で考えています。この料理を作るには、この食材が欲しいけど手に入らないとなれば、もしかしたら自分で作るかも知れません(笑)
拡大するとすれば、そのような方向性になると思っています。
次回のゲストは、OPTICAL YABUUCHIの藪内義久さんにお話を聞いてみたいと思います。トークテーマは「自分のまちは、自分でつくる」です。次回もどうぞお楽しみに。
ライター:上神田健太 書き起こし:宮崎みさ
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