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エリアデザインラボ#8

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1.福祉とまちづくり

 今日はまず、「福祉」という言葉と「まちづくり」が遠いように感じている人も多いのではないかと思うので、言葉の説明から始めます。
「福祉」という言葉は戦後の日本において、GHQが「welfareを意味する単語を日本国憲法に表記しなさい」と命令を出したことで誕生した言葉です。「福」と「祉」は、どちらも「幸せ」を意味する言葉のようなので、

福=祉=幸せ ➡  みんなでつくる幸せ

と捉えておくと良いと思います。

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 まちづくり視点から福祉について考えてみます。一般的に福祉というと、行政サービスとしての「福祉」がよく使われています。現行のまちづくりというと、地方創生に関連する事業が思い浮かぶと思うので、地方創生事業の中の福祉の位置付けを見てみたいと思います。

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 地方創生事業の中の「分野6」に「まちづくり」が位置づけられており、想定される事業例を見ると、拠点整備事業・商店街の再生事業・地域交通事業・人材育成事業など、ぱっと見ただけでは福祉に関連しているようには見えないと思います。福祉については事業説明の一文にちょっと触れられている程度で、商業的、経済的な活性が全面に押し出されているものが多く、直接的に福祉を目的としている事例は少ないです。

 なぜ私が「福祉とまちづくり」をやった方が良いと思うのかというと、第3回のエリアデザインラボを思い出してください。みんなでエリアデザインの定義を考えたときに、「小さな共感の輪を広げていくこと」、「持続的なビジネスモデルになっているかどうか」だよねという話をしました。

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 商業的・経済的な活性化だけを目的としたまちづくりでは、地域に暮らしている人の中に、関わりしろを見出せない人が出てくると思います。そういう人にも手を差し伸べていくことで、より共感の輪が広がり、持続的な活動になっていくと考えています。

 アカリでは、地域食材を使った料理を提供したり、イベントの企画をしたりしていますが、地域資源に付加価値を付けて販売し、外貨を獲得しています。そして、その利益から、町に家賃や税金としてお金を納めるという流れができています。

 今年からは、その納めたお金を使って、まちの教育事業に再投資しようという新たな流れもできています。エリアデザインラボがそのひとつです。

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 このような、まちづくりの事業の中から生まれた利益を、教育だけじゃなく福祉の分野にも再投資することで、新たなお金や人やモノの流れを生むことができるのではないかと考えています。

 これから小林愛さんにしていただくお話はちょっとスケールが大きい「福祉」になりますが、そこから地域に落とし込むことを考えて行けたらと思います。

2,世界の貧困を考える(ゲスト・小林愛さん)

今日はテーマは大きいですが、身近に感じられるようにお話ししていこうと思います。

【小林愛さんプロフィール】
 日本人とタイ人のハーフで、タイ・バンコクの貧しいまち(スラム街)で生まれました。子どもの頃はタイと日本を行き来していたのですが、中学時代はとても貧しくて、川でお風呂を済ませたり、母と雑草を取ってゆでて食べることもありました。日本での豊かな生活とタイでの貧しい暮らし、どちらも知っていたのでその頃から世界の貧困とか格差というものを目の当たりにしていました。

 私の母は「貧しさから脱するためにはまず教育だ」と言ってくれて、私をインターナショナルスクールに通わせてくれたのですが、当時タイのインターナショナルスクールというのは、俗に言うお嬢様学校でした。昇降口にはレッドカーペットが引いてあったり、同級生は高級外車で登校してくるなか、私は毎日スラム街からニワトリを積むトラックに揺られながら登校していました。その頃も、経済的なギャップを常々感じていました。

 そんな経験を通して当時から「国際支援」に興味を持っていて、大人になるにつれてその思いが強くなりました。活動をする上で役立つと思い看護師免許を取得し、実際にカンボジアなど海外で看護師資格を活かした活動を行いました。

 私が海外でいくつか活動を行う中で、個人の力での「国際支援」には限界があることを強く感じました。お金も人も必要で、支援を継続していくためにはかなりのパワーが必要でした。

 そこで、影響力や発信力を身に付けたいと思い「ミス・ユニバース・ジャパン」に出場して、福島県でグランプリを頂いて、それを機にご縁があり芸能の方でも活動しています。最近では、福島市でシェアハウスとカフェを立ち上げて運営しています。

【実際に海外で行った支援活動】
・フィジー
 台風の被害を受けたフィジーのニュースを日本で見て、いても立ってもいられなくなりました。タオルが不足しているという情報があったので、個人で2,000枚くらい集めて孤児院に届けに行きました。まだ学生だった19歳か20歳の頃です。それが私にとって最初の国際支援でした。

・歯ブラシプロジェクト
 福島で歯ブラシを集めて、カンボジアへ届けに行き、看護師資格を活かして衛生指導を行いました。日本だと、衛生指導も教育の一環で当たり前のように行われていますが、発展途上国では美術や体育と同じように保健教育も後回しにされがちです。実際に栄養状態や衛生状態に問題がある子もたくさんいるので、そういった部分を支援活動でフォローしていくことが必要だと思っています。

 私は海外でいろんな状況をみてきたのですが、日本に住んでいると水道から水が出てくるし、ごはんに困ることもまずありません。壁も屋根も暖房も当たり前にありますし、実際に世界で起きている貧困問題や、貧富の差を実感しづらいと思います。そこで、今日は貿易ゲームというゲームを通じて、世界で起きている経済格差の状況について体験してみましょう。

3.貿易ゲーム

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◼️ゲーム結果
獲得金額 
Aチーム:47,000円
Bチーム:125,000円
Cチーム:42,300円
Dチーム:93,000円

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■それぞれのチームの役割について(たねあかし)
 チームの最初の状況が違い、Aチームから順に先進国・発展途上国・後進国・貧困国となっていた。 AとBははじめからスタートできる状態で、 それぞれ予め準備されていたものは →道具(はさみ・定規・コンパス・鉛筆)=技術 →人=生産力・労働力→紙=資源
を表していた。スタートが違う中で国の経済を回さないといけなかった。

■どのようにお金をつくったか 
Aチーム:
本来であれば最も稼げたが、品質が悪かったために獲得金額が少なかった。日本やアメリカは技術や生産力はありお金が生みやすいが資源(石油など)が少ない。その資源の調達ができれば生産可能となった

Bチーム:

コツコツと生産した。発展途上国の役割としてある程度先進国から技術支援を受けて発展できる国だった。そのため労働力があれば自国の力でお金を稼ぐことができた。自国の力でコツコツと生産した点がポイントだった。

Cチーム:

技術が不足していたため、労働力と引き換えに技術を交換した。
まず、定規を真似て自分たちで作ったが、その分精度と品質が下がった状態だった また、金が途中で発掘されたので、それを他国に売った。 後進国は資源はあるものの技術が足りないため、お金を生み出せない環境。 外資系企業が進出し、労働力を安く買うケースが当てはまる。 より稼ぐためには、労働力の対価をもらったりする交渉などができた。

Dチーム:
資源を対価に技術を借りる方法をとった。最後は粗悪品でも量を生産した。資源があるため大量生産をしないといけず、実際に先進国に技術支援を受けて国の生産品 作っている。 持続ができればいいが、安く大量生産をした分、安い金額で買われてしまう。 例えばアフリカのカカオ農家のケースで、安い金額でチョコレートを購入できるのは、先進国がカカオを安い金額で大量に輸入しているから。 しかしながら、大量に売っているが農園の人々は貧しい生活をしているのが現状。 そのため、子供も農園で働かなければならず、教育を受けられないという悪循環が起こっ ている。 認知度は低いが、公正な値段で取引するフェアトレード商品が世の中にはあり、その製品 を選ぶことは、製品の水準が保ち国の発展と生産者の水準を守ることにつながる。

■総括
 今日は国際支援という広いテーマで行ったが、このような状況が自分の身の周りにも小さ く起きているのではないかと考えています。 暮らしの中で社会の縮図を当てはめてみると、人に優しくできたり、自分たちの暮らす 町を「もう少しこうしたら良くなるのでは」といったアイデア作りに寄与できるのではないかと思います。


ライター:上神田健太
書き起こし:関根優花 岡野希春

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