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雑文 #304 淋しさ

針金のような素材のもじゃもじゃしたかたまりが、すぐ目の前にあった。
30㎝ぐらい先に。
それはひどくこんがらがっていて、何か不快なオーラを放っていた。
私はそれから遠く離れてみた。
遠く遠く、300mぐらい離れるとそれは見えなくなり、不快さも消えた。
目の前はすっきり。
スカスカしていると言ってもいいくらいだ。

すっきりさっぱりしたものの、私は虚しくなってきた。
虚しくて淋しい。
心に悲しみの風が吹いているようだ。
どうしようもない。
私にはこの淋しさを埋められそうにもない。
途方に暮れてしまった。

そこへ、ある人がやって来た。
その人のことは少し知っているだけだが、私から淋しさが滲み出ていたのだろう、力になりたいと言ってくれた。
かと言って悩み相談を繰り広げるわけにもいかない。
何しろもじゃもじゃから端を発した、わけのわからない淋しさなのだ。
その人は優しい表情で、そっと私の背中に手を添えてくれた。
そのままどれくらいの時間が経ったのだろう。
背中は温まり、心も温まったのだった。
悲しみの風はひとまず止んだようだ。
その人にお礼を言うと、微笑んで軽く頭を振った。

また淋しさはやって来るだろう。
もじゃもじゃはいずれ近づいてくるし、遠ざかると、虚しさが広がるのだろう。
そんなとき誰かに頼るのも手なのかもしれない。
自分でばかり何とかしようとしないで、誰かの手を借りてみるのだ。
そう思うともじゃもじゃを恐れずに前へ進めそうな気がした。

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