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歌手・麻倉未稀さんに、乳がんについてインタビュー。「ステージに立つという目標があったから決断できた」

※本記事は2018年4月に公開した記事の転載となります。

たくさんの参加者が神戸の街を歩いたスマイルウオーク2017神戸。80年代の大ヒットテレビドラマ「スクール・ウォーズ」の主題歌「HERO」など、数々のヒット曲を持つ歌手の麻倉未稀さんにモモがインタビュー。術後わずか3週間でステージに立たれた麻倉さんに、サバイバーの方へのメッセージなどを伺いました。

モモ:
麻倉さん

今日はトークだけでなく歌まで!
本当におつかれさまでした!

麻倉さん:
モモちゃんもいろいろ頑張っていたね!

写真左:モモ妹、写真右:麻倉未稀さん

モモ:
いえいえ、麻倉さんに比べたら!

それにしても、
HERO』は圧巻のパフォーマンスでした!

麻倉さん:
ありがとう。実は術後、
声が前にも増して出るようになって……。

モモ:
え、そんなことあるんですか!?

麻倉さん:
乳がんの手術をして、
最初のうちは痛みがありますので、
それで力を入れられない分、
歌いやすくなったったんです。

モモ:
なるほど!

麻倉さん:
無駄な力が入らないから、すごく歌いやすい(笑)。
怪我の功名ってやつですね。

この状態を覚えておけば、
痛みがなくなっても楽に歌えると思って、
今は頑張って歌い方を記憶しているところです。

「スクール・ウォーズ」の主題歌「HERO」を歌う麻倉さん

モモ:
麻倉さんは、
考え方がすごくポジティブで
とってもステキです!

麻倉さん:
ありがとう、モモちゃん。

モモ:
術後3週間でステージに立たれたということで、
いろいろご苦労されたと思うのですが……。

麻倉さん:
テレビ番組の企画で乳がんが見つかり、
その1ヶ月後には手術でした。

私も無謀かなと思ったんですが、
主治医の先生に相談したら、
術後3日は歌えないけど、
 1週間したら歌えるんじゃない

って言われたので、
トレーニングを頑張りました。

モモ:
具体的にはどんな?

麻倉さん:
体幹のトレーニングですね。
入院中も無理を言って行っていました。
退院後も欠かさずに続けたおかげで
なんとか本番3日前に、リハーサルを行えました。

モモ:
麻倉さん、すごい……。

麻倉さん:
でも、正直、
ステージに立つという目標があったから
いろいろ決断できたし、
頑張れたんだと思っています。

モモ:
目標、ですか?

麻倉さん:
私の場合、歌は、
今後の自分の人生を
どのように生きていくかにおいて、
重要なものでしたから。

術後の治療法も、
私の場合は、がんのタイプが、
偶然にもホルモン治療のみのものだったので、
これは〝先に進むしかない〟なって。

モモ:
そうだったんですね。

麻倉さん:
もちろん、乳がんがわかった時点ですでに
仕事が入っていたので、
それをどうすればいいのか、
ということがまずありました。

それに抗がん剤や放射線治療であったら
そんなに早く復帰できなかったと思います。

モモ:
歌が麻倉さんを助けたんですね。

麻倉さん:
そうですね。ですから、
治療法を決めるために、
がん細胞の検査をするのですが、
その結果が出るまでの期間、
がんのタイプがわかるまでが
精神的にきつかったですね。
どうなるんだろうって。

モモ:
今日も参加者のみなさん、
麻倉さんの歌声に会場で驚いていましたよ。
元気をもらったー!」って話している
方もたくさんいらっしゃいました。

麻倉さん:
ありがとうございます。
早く復帰してよかったと思っています。

乳がんだけでなく、さまざまながんの方に
声をかけられることも多くなりました。
すごく励みになるよ!」って。

モモ:
今日のスマイルウオークでも、
ご登壇いただき感謝です。

麻倉さんの歌声に聞き入るスマイルウオークの参加者

麻倉さん:
神戸大会のお話をいただく前から、
ピンクリボン活動は存知あげていたのもありますし、
乳がんを経験した私が発信することで
お役に立てればって。

乳がん=死〟みたいなイメージが
みなさん、まだおありだと思います。
私もそうでした。

でも、今は医療も発達してきていますし、
そうではないということを
私の口から言えれば、
皆さんが怖がらずに検診へ行こう
って気になるんじゃないかなって。

モモ:
検診で見つかったら嫌だな」って気持ちが、
病院への足を遠のかさせるんですよね…。

麻倉さん:
私も怖かったですよ。
でも、今は早く発見できれば
乳がんは治る確率が高い病気なわけですし。

見つからなければ、
それはそれで安心ですので、
みなさんにはぜひ
検診に行ってもらいたいと、思っています。

モモ:
検診はやっぱり大事ですよね。
そのほか、乳がんになられたご経験から、
なにかアドバイスをいただけますか?

麻倉さん:
私はたまたま番組で見つかったので
公表に至ったんですけど、
私のお友だちの中には誰にも言わずに
抱えている人が結構いたんです。

私が乳がんだとわかって、
初めて打ち明けてくれた人もいるくらいで…。

モモ:
そうだったんですね。

麻倉さん:
がんって、
やっぱり家族もすごく大変なんですよね。
うちの主人を見てても、そう思いました。

モモ:
家族は第二の患者」とも言われていますもんね。

麻倉さん:
乗り越えるには、
自分や家庭の中で納めないで、
信頼できる人に相談することも
なさったほうがいいんじゃないかなって。

モモ:
モモもそう思います。

麻倉さん:
あと、主人の家族に対して、
申し訳ない」という気持ちも抱きました。

治療中に面倒をかけてしまうのではないか、とか。
もしかしたらですが、
きっと、みなさんの中にも
そういう気持ちになった人がいるかもしれません。

でも、
がんになったことで、自分を責める必要はない、
そのことも伝えたいです。

モモ:
すごく励みになるメッセージだと思います。

麻倉さん:
あと、女性にとって、
胸を無くすという決断をすることが、
非常に勇気のいることだということもわかりました。

私はステージ2で、温存は無理と言われた時、
仕事への覚悟で全摘を決めました。
歌えるなら、おっぱいなんかいらない!」って。

でも、多くの人は主婦だったり、
小さなお子さんがいたり、
さまざまな事情がある中で、
決断するのは本当に難しいことなんです。

モモ:
麻倉さんは迷われなかったんですか?

麻倉さん:
セカンドオピニオンで診ていただいた先生も、
初めに診ていただいた先生と
同じ意見だったことも大きいです。

でも、私の場合は歌。
次の歌を歌うんだ!」という
強い想いがあったから、スパンスパンと
最短距離で決められたんだと思います。
まあ、性格的なこともあるかもしれませんが(笑)。

モモ:
今は、世の中にたくさんの情報があって、
迷いやすい状況だと思います。
なにか良いアドバイスをはありますか?

麻倉さん:
そう言えば、
私が公表した時も
メールや郵便などで、たくさんの情報が来ました!

中には、ライブ会場にまで
来てくださる方もいて……。

モモ:
そうだったんですか!

麻倉さん:
ネット上にもいろんな情報がありますし、
友人が薦めてくれるものもあった。

私は切ることを決めていたので
揺るがなかったんですけど、
中には胸を残したいって人も多いだろうし、
迷われる環境にはありますよね。

ステージでのトークショーの様子

モモ:
今はインターネットで
情報が簡単に手に入る時代。
良くも悪くも……。

麻倉さん:
やはり、先生との信頼関係が大事だと思います。

不安に思っていること、
また、例えば
こういう方法はどうなんですか?」とか、
自分が調べた情報なども聞いて
答えてくれる先生であれば、
本人も納得したうえで治療に臨めると思うんです。

モモ:
先生との信頼関係ですね。

麻倉さん:
最終的には自分の病気なので、
冷静に自分の病気を、俯瞰で見ていくことが
大事なんだなって感じました。

モモ:
でも、麻倉さん、

みんな、
なかなかそれができないと
思うのです……。

麻倉さん:
ごめんなさい、そうなんですよね(笑)。
だから、付け込む人がいる。
患者さんは藁をもすがる思いだから。

でも、私の経験上、
まずは目標を持つこと、
そして先生との信頼関係。
これに尽きると思っています。

モモ:
目標
と、
先生との信頼関係ですね!

麻倉さん:
迷いが無くなることはないのかもしれませんが、
信じることで、一歩でも前に
進むことはできると思っています。

モモ:
ステキなアドバイス、
ありがとうございました!

最後に記念写真