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〜ここにはないもの〜 #3



昨夜は色々とドタバタしながら2人で準備をした

梅澤さんに帰省することを電話したら、
『有給あげるから行ってこい、ばかたれ!』
と怒られた

妹には明日、彼女を連れて帰ると連絡したら…
『わかった。気を付けてね 』
と返ってきた




さくらは色々と準備を手伝ってくれて、
電車に乗ると揺れが心地良くなってきたのか隣で静かに眠りについた


ただ…いつもとは逆で……

僕の手の上にさくらの手があって、ぎゅっと握ってくれていた




ガタンゴトン…



〜ここにはないもの〜 #3




ガタンゴトン……




〇〇:わーい!電車だー、電車ー!


小学生の僕は大好きな電車に大興奮していた
そしてそれを止める母が横にいた

飛鳥:こら、〇〇!静かにしなさい!笑


あやめ:ねぇママ…どこにいくの…

僕とは違い、乗り物酔いをよくするあやめは少し電車に怖がっていた

飛鳥:パパがね、大事な書類忘れたからパパのところに届けに行くよ!

あやめ:パパに会いに行くの!?

飛鳥:そうだよ!あやの大好きなパパのところ!

あやめ:えへへ///


僕とあやめを両サイドに座らせて母は2人の手をそれぞれをぎゅっと握る



〇〇:ねぇ、母さん手離してよー!!

飛鳥:だーめ!笑

〇〇:やだ!やだ!!

飛鳥:〇〇はすぐどっか行っちゃうからだーめ!笑

〇〇:えー、なんでよー

あやめ:お兄ちゃんは落ち着きないもん笑

〇〇:あやめなんて電車怖いくせに!笑

あやめ:こ、怖くないもん…酔いやすいだけだもん

飛鳥:はいはい…2人とも静かにね笑

〇〇:うー、お外みたいのにー!!

飛鳥:だーめ笑



手を離せ!なんて言いつつも、
僕の手の上に置く母の手はとても温かくて…

それが…



僕は大好きだったんだ…







コツン…


〇〇:!!?


寝ているさくらの肩が僕に当たる
そこで僕は我にかえった


みるとズボンに小さなシミが2つできていた





慌てて顔を拭い、じっと…外を眺める


だんだんと窓からみえる景色が殺伐としていく

ただ知らない間にコンビニや百貨店が新しく建っており、都会が田舎に侵食していく様子がみてわかった


アナウンスが僕たちの目的地を読み上げた
さくらの肩をトントンと叩く



〇〇:さくら、ついたよ。

さくら:ん…

〇〇:おきて。

さくら: …うん




目をゴシゴシするさくらの手を握って、ゆっくりと電車を降りる

昔を思い出すように…
改札へと続く道を噛み締めながら歩く

昔は見窄らしいロータリーだった…

いつやってるか分からない商店街
いつくるか分からないバス停とタクシー

だけどそこには、
コンビニが建ち新しい駐車場が作られていた


〇〇: ……


ここも都会に侵食されていたのだと悟る
勝手に上京しておいてなんだが、なぜかそこは少しだけショックだった



そんな事を考えていたら遠くから声が聞こえた




??:お兄ちゃんっ…!



そこには7年ぶりにみる妹がいた…






#4 ↓

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