私を助けてくれたのは、〇〇先生と成仏出来ない幽霊でした。 最終話
瑛紗:〇〇、どうしたの?
〇〇: ……
〇〇は室外機の裏やドアの裏と何かを探しているかのようにキョロキョロしていた
瑛紗:探しもの…?
〇〇:いない…
瑛紗:私も一緒に探そうか?
〇〇:いないのか…
瑛紗:まぁ聞こえても見えてもいないよね…
〇〇:てれさ…
瑛紗:え…
その時確かに
〇〇は私の名前を呼んでくれた
〇〇:瑛紗っ!いるんだよな…
やっぱり呼んでくれてる
私は無我夢中で叫んだ
瑛紗:いる…いるよっ!!
〇〇:いたら返事をしてくれ!!
瑛紗:いるよ!目の前に!!!
〇〇: ……
瑛紗: ……
〇〇:やっぱり…いないよな…
瑛紗:〇〇…
伝わらないことなんて分かってた
ただ…ただ…〇〇に伝わって欲しかった
〇〇:五百城がここにいるって教えてくれたんだ
瑛紗:まおちゃん
〇〇:いや…ここにいなくてもいい…
瑛紗:え?
〇〇:でも…届いてくれ…
瑛紗:〇〇…
〇〇:ずっといいたいことがあって…
瑛紗:うん…
〇〇は深々と頭を下げた
〇〇:俺のせいで…ごめん、
〇〇:あの時からずっと後悔してて、本当にごめん
瑛紗:そんな…謝らないで…
〇〇:だからあの時から…
〇〇:瑛紗が天国に逝った日から…
〇〇:瑛紗が安心して見てられる人になるって決めたんだ…
瑛紗:うん…なってた…なっててくれた…
〇〇:なれてたか分からないけど…
瑛紗:なってたよ…
〇〇:五百城のこと、助かったよ…自殺しようとしたのを何度も助けてくれたって。
瑛紗:ううん…〇〇が来てくれたから…
〇〇:届いてくれてたら嬉しい…
瑛紗:大丈夫。届いたよ…
ふと気付くと…
私の身体は半透明になっていた
あぁ、これで成仏できるんだとすぐに悟った
そっか…私…最後に〇〇と話したかったんだ
だから、ずっと成仏出来なかったんだ…
ありがとう、いおちゃん
いおちゃんのおかげで〇〇と再会できたよ
ありがとう、〇〇
〇〇のおかげで友だちのいおちゃんを助けられた
知ってた、〇〇
私ね…
〇〇のこと…ずっと前から…
それは、
私たちが1年生の時のあの教室から始まった
〜
〜〜
瑛紗:うわぁ、忘れ物したー
その日の私は走っていた
教室の机の上にスケッチブックを忘れたからだ
誰にも見せたことのない趣味…
というか、
私の将来の夢がスケッチブックには詰まっている
瑛紗:何で忘れるかなぁ、てれのバカバカバカ…
瑛紗:でも大丈夫、金曜だからみんな帰るの早いはず
適当な理由をつけては自分を言い聞かせてダッシュで廊下を走り、教室を覗く
瑛紗:げっ…誰かクラスに残ってるし…
こういう時に限ってクラスには人が残っていて、
そして、そいつは私のスケッチブックを見ていた
瑛紗:えっと…〇〇くん
〇〇:あ、池田さん、おつかれさま!
瑛紗:あの、それ…
私は〇〇くんがもつ"私の"スケッチブックを指差す
〇〇:あ、ごめん。池田さんのか!
瑛紗:うん…もしかして見ちゃった?
〇〇:うん、ごめん。
瑛紗:あぁ…(最悪だ…)
〇〇:びっくりしたよ
瑛紗:あ、はい(笑われるんだろうな…)
〇〇:池田さん、すごい絵が上手いんだね!!
瑛紗:え!?
〇〇が見たスケッチブックは、
それは練習用で走り書きしたばかりのやつ
瑛紗:そ、そんなことないよ
〇〇:俺、絵描くの苦手だから…凄いよ
瑛紗:そ、そうかなぁ、ありがとう。
〇〇:将来、絵描きさんになったら良いのに…
瑛紗:え?!
〇〇:え?あ、ごめん。勝手に言いたいこといって
瑛紗:あ、ちがうの。
〇〇:ちがう?
瑛紗:な、なれるかな…絵描きさんに…
〇〇:なれると思うよ、だって素敵な絵だもん!
瑛紗:う、うん…ありがと…///
きっかけは些細なことで…
そこから私は、
新しいのを書いては〇〇に見せるようになって、
だって、
〇〇に褒めてもらいたくて…
そしたらまた頑張ろうって思えて…
先生:じゃあ多数決の結果、クラスでの文化祭の出し物はお化け屋敷で決まりました!
生徒:はーい!
先生:あとは掲示板に宣伝用のチラシ貼るから、誰か作ってくれるかー?
生徒:え、私、絵とか無理なんだけど…
〇〇:先生!
先生:どうした…〇〇!
〇〇:池田さん絵が上手だから適任だと思います!
瑛紗:え、私…
先生:おう!どうだ、池田!
瑛紗:あ、えっと…
〇〇:瑛紗ならできるよ!ぜったい!!
瑛紗:う、うん…/// や、やります!
〇〇、覚えてる?
あの日の放課後…私怒ったよね…
何で勝手に推薦するのよー!!!って
でもね、
本当は嬉しかったんだ
ぜんぶ、〇〇のおかげ…
でもそんな私だけど、
〇〇と一緒で後悔してることがあるの…
それら自分の思いを伝えられなかったこと…
恥ずかしくて告白できなくて
そしてクラスが別れて
気付いたら〇〇はイジメられていて…
〜
〜〜
〇〇:じゃあね…また来るよ
屋上から去ろうとする〇〇
多分、"また"はもうない
自分の身体のことだもん、自分でわかる
瑛紗:まって!!!
帰ろうとする〇〇の背中に私はギュッと抱きつく
あったかい…
この感覚は"嘘"
そんなことはわかってる
でも〇〇の背中は大きくて…あったかくて…
ずっと前からこうしていたかった
これが最後のチャンス…
私はずっと想っていることを音にする
〇〇、大好きだよ…
そして私は静かに消えていった
〜
〜〜
ガラガラガラっ
保健室のドアが開き、女生徒が入ってくる
生徒:先生!転んでひざすりむいちゃいました
??:はーい、うわぁ、めちゃいたそう!!
生徒:ちょっと!茉央先生がそんなリアクションするるともっと痛くなるじゃん笑
茉央:ごめんごめん、あと"五百城"先生!
生徒:はいはい!茉央先生ー!笑
茉央:もうっ、消毒するからこっちおいで!
生徒:はーい
今の私は乃木坂高校の保険医として働いている
ちなみに〇〇先生は教頭先生になってたりする。
校長先生になることも出来たらしいけど生徒とちゃんと触れ合っていたいって理由から断ったんだってさ。
茉央:ガーゼをつけたら…はい!これでよし!
生徒:ありがとう!
茉央:いえいえ!
生徒:ってか茉央先生、羨ましいです!
茉央:え?何が!?
生徒:だって美人だし…保健の先生似合うし!
茉央:そうかなぁ、ありがとね
生徒:悩みとかなさそうだもん笑
茉央:うわ、失礼だなぁ笑
生徒:学生時代モテたんでしょ、どうせ
茉央:ううん!むしろ逆!イジメられたよ!
生徒:え、そうなの!?
茉央:そうだよ!毎日泣いてたんだから、
生徒:それで大丈夫だったの?
茉央:うん、助けてくれたから…
生徒:助けた?
茉央:そう!2人にね!
生徒:良い人もいるもんだねー 笑
茉央:1人はあなたも知ってる人だよ 笑
生徒:え、だれだれ?
茉央:私を助けてくれたのは、〇〇先生と成仏出来ない幽霊でした。
生徒:え、幽霊?!笑
茉央:そうだよー!あと〇〇先生!
生徒:まぁ〇〇先生はわかるけど幽霊って笑
茉央:そうなるよねー笑
この話を生徒にすると、
ほとんどの子が信じてくれない…
まぁいきなり幽霊と言われても分からないよね
でもね、このことを話す時は、
本当のことを話すと私は決めているの
だって〇〇先生とてれちゃんは、
私を笑顔にしてくれた大切な友だちなのだから
私を助けてくれたのは、〇〇先生と成仏出来ない幽霊でした。
おわり。