〜ここにはないもの〜 #9
ドンっ!!!!
あやめ:はい、これ!どうぞっっ!!!!!
〇〇: ……
さくら: ……
親父:あの…あやめ…ちょっと量多くないかな…
茶碗に山盛りに盛られたご飯
それをあやめは親父のところに置いた
あやめ:お腹空いてるーって言ってさ、"呑気"に帰ってきたもんねー、さっき!!!
親父:はい…
あやめ:じゃあ残さないでね!
親父:はい…
〇〇:ふふふ笑
激怒しているあやめと小さくなっている親父を見て僕は笑みが溢れた
あやめ:何がおかしいのかな、お兄ちゃん…
〇〇:い、いえ、な、なんでもないです
あやめ:元はと言えばさ…お兄ちゃんがあやにちゃんと説明してくれれば良かったよねぇ
〇〇:はい…すみません。
あやめ:私、パニックになったのバカみたい!
〇〇:いやでもそれは、あやめの早と
あやめ:なーに?!!!
〇〇:いえ、なんでもありません
外の天気は快晴、内の天気は落雷警報
朝からあやめが怒っている、そんな状況になったのには少し順を追って説明しなければならない
…
……
昨夜
親父と書斎を出た僕は居間へ向かった
齋藤家の居間にはこたつが置いてある
母が好きだからという理由で365日置いてある、そのこたつでさくらはスヤスヤと眠っていた
僕が来るまで待っていようと思ったけど、
疲れて眠ってしまった、そんなところだろう
さくらを抱き起こし、
布団の置いてある部屋へ向かう
朝からの移動に初めての環境、疲れが溜まっていたのか全く起きる気配はない
〇〇:さくら、ありがとう。
寝ているさくらに感謝を伝え布団をかけ、
僕は自分のバックを確認する
〇〇:よかった、持ってきてた…
お目当ての箱を確認して僕もとなりの布団に入る
そしてイヤホンを耳につける
もちろん流すのは母さんの1番好きな歌…
〜〜〜
寂しさよ 語りかけるな
心が折れそうになる
人間(ひと)は誰もみんな
孤独に弱い生き物だ
〜〜〜
母さんが何故、こんな悲しい曲を好きなのかは分からなかったけど…
でも僕の背中を押してくれている気がした
〜ここにはないもの〜 #9
〜〜〜
いつの日かわかるのかな
この決心の答え合わせを…
大切なその手を一度離したって
また会える日まで
〜〜〜
母の大好きな歌をリピートしながら、僕は静かに眠りについた…
…
……
あやめ:お兄ちゃん!お兄ちゃん!!!
〇〇:うーん…あやめか…どうした?
あやめ:お父さんが…お父さんがいないの!!
さくら:え?!
あやめ:ねぇ、昨日何かあった!?
〇〇:何もないよ、大丈夫だよ。
寝惚けていてちゃんと説明しない僕
あやめはどんどん不安になっていった
あやめ:どうしよ…
さくら:き、きっと大丈夫だよ、あやめちゃん
あやめ:でも…でも…
〇〇:うーん、いま何時?
あやめ:何時って、7時!7時15分!!!
〇〇:あー、なら大丈夫だよ。
あやめ:え?!どういうこと…
さくら:〇〇くん?
〇〇:もうじき帰ってくるよ…zzz
あやめ:ちょっとお兄ちゃん!!!
あやめは力任せに僕の布団をとる
〇〇:ちょ、ちょっと、
あやめ:ちゃんと説明して!
さくら:〇〇くんっ。
〇〇:わかった、わかった…
改めて時計を見る時刻は7:15すぎた辺り
〇〇:たぶん、もうそろそろ帰ってくる…
さくら:なんでわかるの?
〇〇:いつも通りに6:30に出たならそうだから!
あやめもこれでわかるだろ…笑
あやめ:それって…
ガラガラガラ(ドアが開く音)
〇〇:ほら、帰ってきた。
あやめ:もうっ!!
あやめは早足で玄関に向かった
あやめ:どこいってたのっ!!!
親父:いや散歩だけど…
あやめ:ずっと行ってなかったじゃんっ!!!
親父:あぁ、そろそろいつもの生活に戻らないとなって思ってね。
あやめ:なんで私に言わないのっ!!!
親父:あ、いや朝早かったしな…
〇〇:あやめ…そんな怒らなくても。
あやめ:うるさい!お兄ちゃんは黙ってて!!
親父:あやめ?
あやめ:心配したんだよ…
親父:あ、
あやめ:うぅ…ぐすっ…
〇〇:あやめ…
親父:あやめ、ごめんな。ありがとう…
あやめ: ……
〇〇:あ、朝ごはんにしよう!!
親父:そ、そうだなっ…
さくら:うん、そ、そうしよう
〇〇:あやめ、朝ごはん作るの手伝おうか?
あやめ: ……
さくら:あやめちゃん
あやめ:ちゃんと食べる…?
〇〇:!!
さくら:!!
下を向いたまま放ったあやめの言葉を聞いた僕とさくらは親父の方へと顔を向けた…
親父は嬉しそうな悲しそうな複雑な顔をしていた
親父:あぁ!散歩してお腹ペコペコだからな、あやめが作ってくれたご飯沢山食べるよ!!
あやめ:うぅ…もうっ朝ごはんできてるもん!!
〇〇:さすが、あやめ!笑
あやめ:うるさいっ!!
さくら:もう…笑 あやめちゃん、食器とか出す?
あやめ:すみません、お願いします!
親父:俺も何か手伝うか…
あやめ:お父さんはお母さんに挨拶してきて!!
親父:はい。
そういって仏間の方を指したあやめは早足で台所へと向かった
そして親父も仏間へと向かっていった
〇〇:朝から心配かけてごめんね
さくら:ううん…お父さん元気になって良かった
〇〇:さくらのおかげだよ…
さくら:え?
〇〇:さくらが僕に言ってくれたから…
さくら:そ、そんなことないよ…///
〇〇:ううん、ほんとに…
さくら:いつも私が助けてもらってるから…///
〇〇:ありがとう。
あやめ:お兄ちゃーん、ごはーーーーん!!!
さくら:あっ…手伝い忘れてた…
〇〇:さくら急ごう!あやめ怒ると怖いから…笑
さくら:あ…/// うんっ!
僕はさくらの手を握って台所へと向かった
そしてこのあと、激怒したあやめに親父は山盛りのご飯を食べさせられていた 笑
…
……
朝ごはんも食べ終えるころにはあやめも落ち着き、少しずつ会話が増えていった
あやめ:今日、墓参りにいくの?
〇〇:うん、いくつもり!
あやめ:じゃあ車使う?
〇〇:あ、借りていい?
あやめ:うん、いいよ。
夕方の買い物までに帰ってきてくれれば!
〇〇:あぁ、墓参りしか行かないから大丈夫。
さくら:ありがとう、あやめちゃん!
あやめ:いえいえ!笑
親父:〇〇っ…
〇〇:うん、なに?
親父:ちょっと書斎に来なさい。
〇〇:うん?
親父:話がある。
〇〇:あぁ、わかった。
親父に呼ばれ、一緒に書斎へ向かう
そこで僕は、親父から母の写真を渡された
それは、
僕の人生を決める"きっかけ"となる写真だった
つづく。
#10