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ロクの夕暮れ プロローグ

割引あり

僕が生まれた頃の話

僕の寝床は小さな箱の中だった。
箱の外は薄暗いけどすごく広いところ。
その広いところは、大きなまんまるの四つ足が並んで座っているんだ。

あの大きなまんまる四つ足は明け方になるとみんなどこかに出かけていなくなる。
だけど、僕が昼間出かけて、暗くなって寝床に戻った時には、みんな帰っている。
そして不思議なのは、まんまる四つ足の奴ら、頭と腹のそれぞれ横に扉があるんだ。
明け方、二つ足で歩く奴らがあのまんまる四つ足の頭を開けて入るんだ。
そしたらあいつらは動く。
動くとき、必ず物音を立てる。
「キュルルル。。。ブウん!ウーーン・・ウン!」

そして、まんまる四つ足が帰って来るときは、お尻から小屋に入って来るんだ。
右の頭から、必ず二つ足のやつが出て来る。
あのまんまる四つ足、帰ってきたら、鼻先がいっつも温かい。
僕は時々あの鼻の上に乗るんだ。
そうするとオクサンに必ず怒られるの。

「こら!またバンパーの上に乗って!降りなさい!」
仕方ないから降りて寝床に戻る。
オクサンは僕にいつもご飯をくれる二つ足の奴。
まんまる四つ足に出入りしている二つ足の奴らからそう呼ばれている。
他の二つ足の奴らより声がちょっと高くて、小さくて細いんだ。
言う事を聞かないとご飯くれなくなるからね。
でも、僕が時々 「にゃー」と声を出すとものすごく喜んでくれる。
そんな毎日がずっと続いていた。

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