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アニメのタイムシート書きたくない話

アニメーターのやまだももこです。

アニメーターの作業の一つに、タイムシートを書くという工程があります。絵だけ描いてりゃいいわけじゃないんですね。
タイムシートは、何秒何コマに何番の絵がきて、中割りは何枚で、セルの重ねはこうなっていて…と言った、絵とタイミングを紐づける役割をしています。

他にも大切な情報として、作品名、話数、カット番号、カットの尺の長さ、作業者名、どんなチェック工程まで進んでいるかというそもそもの情報も書いてあります。

そして、カメラワークの指示や、光の指示などなど、撮影時、編集時に必要になる指示をすべて書き込む必要があります。

作画のアニメはたくさんの人の手に渡って、そして戻ってきて、そしてまたたくさんの人の手に渡ることで少しずつ完成に近づいていきます。
タイムシートは、その時の情報伝達の要というわけです。

数字と言葉と記号を使って、全てのセクションの人が、カット内の全ての情報を読み取れるようにしなければいけないんです。

タイムシートが読めないまま、作画のアニメ制作に携わることは今のところほぼ不可能だと思っています。
それくらい本気で大切なものです。


逆に、3Dでも2DでもCGとなれば、タイムシートのようなものがある現場を、まだわたしは見たことがありません。あるのでしょうか。大人数が携わる作品なら情報伝達のための仕組みがなにかあるのかもしれませんよね。

わたしは3DCG、カットアウトアニメ、ともに小規模な作品にしか関わっていません。なので、アフターエフェクツを使ってキャラクターと背景を組み合わせ、カメラワークをつけて、タイミングを調整して、影入れて、みたいなところまでは基本的にできるようになりました。
撮影さんの業務のひとかけらのほんの一部分を担っている形になります。

できてしまうがゆえに、タイムシートにpan A→Bだとか、cセルSLア→イだとか、もろもろ書くのがなんだか違和感になってしまったという話です。

下手すると、文字を書く時間より、AEで一つ作業をする時間の方が短いわけです。


こうして、重要な伝達事項を記入するのがなんだかストレスになり、作画の仕事はもういいかな〜というマインドが出来上がりました。

仕事であまり絵を描いていないので、たまに無性に絵が描きたくなり、作画の仕事を今本気でやったら自分はどんなアニメが作れるようになったかなー?上手くなったかなー?下手になったかなー?と気になることがあります。
でも、タイムシートあるし、まあやんないよね!という結論になるわけです。

このタイムシートめんどくさいマインドから抜け出して、作画のアニメに戻る未来はあるのでしょうか。ゼロではないけど、まあこのまま後退せず前進していきたい自分としては、なんかまた別の新しいことに挑戦している未来の方が容易に想像できるなー。


だがしかし!タイムシートは各セクションへの情報伝達として本当によく出来たシステムなのです。
デジタル化に伴いもしかしたらタイムシートいりませんよーという現場も出てきているのかもしれません。それもまた一つの未来なんだろうなーと思います。

大規模な現場、小規模な現場、日本だけじゃなく世界にアニメを作っている現場がある中、一部しか知らないことは確かなので、私が知らないところでどんな情報伝達が行われているのか気になるところです。

やまだももこ

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