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漆職人の工房紹介〜理想を形にした注文住宅〜
ばんじまして、漆職人/作家の長屋です。
2023年2月、出雲の片隅に住居兼アトリエを建てました。
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間取りから床材、壁紙、ブラインド、照明、コンセントの位置まで細かく注文したオンリーワンの漆ハウスです。
漆職人が考える理想のアトリエについて私見ドバドバで紹介していきたいと思います。
これから工房を建てる方はもちろん、趣味で漆をやっている方の参考になれば嬉しいです。
漆職人の工房紹介〜理想を形にしました〜
間取り(ギャラリー)
工房入ってすぐは約10畳ほどの展示&商談スペースになっています。
作品の写真を撮るときもここにミニスタジオを広げて撮影しています。
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間取り(作業部屋)
ギャラリー部分を抜けると奥は作業スペースです。
ここは6畳ほどですが、L字の窓がついていて開放的なのと、収納棚はすべて備え付けなので広さを確保できています。
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漆の作業はホコリを嫌うため、ギャラリースペースと作業スペースは必ずドアで区切ります。
ドアを閉めても中の様子は見えるように、大きめのガラスの戸を希望しましたが、なかなか良いのがなくて苦労したのを覚えています。
作業台
作業台の高さは70cm。奥行きは55cm。これも指定して作ってもらっています。奥行き55cmにしたのは、漆で使う定盤の奥行きが50cmだったので、それが置けるようにしたかったからです。
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作業台をL字にすることで、作業内容ごとにいちいち片付けなくても、自分が移動するだけで並行して作業を行うことができます。
床材
工房の床は暗めの色をオーダーしました。
漆や研ぎ汁をこぼして床が汚れるのは目に見えているので、そうなっても汚く見えないように、むしろ味が出るように考えました。
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収納、造り付け棚
漆はとにかく道具が多い!素材も細かいものがたくさんあります。壁上につける収納棚にもこだわりました。
よく使うものは下段、あまり使わないものは上段に保管しています。
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水場
工房には業務用の洗面台が入っています。ここも必ず汚れる場所なので、ステンレス製でとにかく広いのが一番いいと思います。
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漆器を洗う用のスポンジと一般食器を洗うスポンジは分けています。
漆器を洗うスポンジにはなるべく油分をつけたくないためです。
食器用洗剤とハンドソープが入れられるディスペンサー、控えめに言ってめちゃめちゃ便利です。
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漆器はなるべく90度以下の温度で使いたいので、温度調整して沸かせるケトルは重宝しますよ。朝イチで60度くらいで沸かして白湯を飲むのも健康的です。毎日愛用しています。
冷暖房、空調
冷暖房は作業部屋のエアコンのみ。
湿度管理のことを考えると本当は石油ストーブが良いと思うのですが、新築で火事も怖いのでいまのところエアコンで管理しています。
10畳のギャラリースペースにもエアコンの穴だけは作ってあります。
明かり取り、照明
デスクライトはLOWYAで買ったこちら。まだ同じものが売っていました。
一度壊れたけど補償付きで無償で交換してもらえた思い出。
電球もLEDがいいですね。作業中も熱くならないので。
あとは自然光と蛍光灯で間に合ってます。
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住所とは独立
うちは住居と工房は完全に独立した間取りにしています(屋根だけ繋がっている)。これは家モードと仕事モードを自分の中できっちり分けるため。
同じ空間になるとついつい夜なべしてしまったり、気持ちに緩みが出てしまいます。
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広さはどれくらい必要?
漆をやっていく上で部屋の広さはどれくらい必要か?と聞かれますが、ぶっちゃけ4畳半あればできると思います。広いに越したことはないですが、狭い方が温度や湿度の調整はしやすいです。あとは一人でどれくらいの工程を担当するかで変わってきます。職人さんによっては机ひとつあれば完結しますという方もいます。
漆職人の工房紹介〜家具、道具〜
漆風呂
私が使っている漆風呂(漆器を乾かす環境)はその昔、なかもくさんでフルオーダーで作っていただきました。当時住んでいた部屋に合わせて幅120、奥行き60cmで指定して、メールのやり取りで完結しました。
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10年前当時、本体価格18万だったように思います。現在はもう少し高くなっているのではないでしょうか。回転風呂も作ってもらえるようですよ。
椅子
一日のほとんどをここに座って過ごすので椅子はとても大事です。愛用しているのはハーマンミラーのセイルチェア。購入したタイミングがちょうどコロナ禍で、リモートワークが流行り始めた頃だったのですが、高級チェアが枯渇するギリギリ前に購入できました。今は在庫不足は解消されているようです。
真空吸着式研ぎろくろ
高速から低速まで、小物から大物まで器物を傷つけることなく回転させて研ぐことができます。
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回転は足でペダルで調整します。本体で30万円前後。これとは別に真空器が必要になるので今から揃えようと思うと40万円くらいはかかると思います。
私は15年ほど前に石川県山中の職人さんから中古で11万円(真空器込み)で譲り受けました。7年くらい前に一度故障して直してもらいました。修理費は1万5千円でした。まだまだ現役で頑張ってもらいます。
真空吸着式手回しろくろ
こちらは主に塗りや下地で使うろくろです。足ペダルで調整する研ぎ用ろくろとは違い、手動で回します。真空器は差し替えて、研ぎ用と共用で使っています。
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古道具たち
学生の頃、金沢の古道具屋さんで道具入れを2つ購入しました。当時3,000円とか4,000円だったと思います。
購入したは良いものの、自転車だったので持って帰るのには無理があり、試行錯誤していたら見かねた店主さんが車で配達してくれました。優しい時代。
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ゴミ箱
Instagramでも紹介しましたがゴミ箱はこれ一択だと思っています。ゴミ箱のくせに高すぎるよ!とも思いますがこれは一生モノだと思います。火災予防のためにも蓋つき&金属製を選びましょう。
空気清浄機
空気清浄機はこちら。かなり優秀だと思っています。加湿器は今の所使っていません(日本海側の湿度ありがたし)。
スマート工房
工房自体をスマート化するために、エアコン・お掃除ロボット・ドアの開閉センサー・温湿度計・BGMなどSwitchbotで管理しています。特にエアコンを遠隔地で管理できるのはとても便利です。
最近、加湿器も気になっています。
まとめ
漆職人の工房について写真付きで紹介しました。
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個人的に、工房を自分でデザインし1から建てるメリットはとても大きいと思います。
複数の作業を並行しておこなっていく漆芸の場合、動線はとても大事ですし、体に負担が来ない高さや配置を考慮して設計することで、長く健康に制作を続けることができます。
収納を多く作れるのも利点です。物であふれて散らかっていると、意図せず作品を傷つけてしまう可能性も高まりますし、目当ての道具が見つからないと効率が落ちてしまいます。
漆は四畳半あれば仕事ができる、と個人的には思っています。
火を使う窯も必要ないし、大量の水が要るわけでもない。
狭い環境でも工夫すれば最高の作業環境になります。
アパートの一室でも十分に漆はできるので、興味を持って始める人が増えてくれたら嬉しいです。
ちょうど今Amazonスマイルセールが実施されているので、気になるものがあったらぜひチェックしてみてください。
これからも快適な工房を目指して改良し続けていきます!