私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #24 Ryusei side
アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。さとみを狙う後輩志田潤はどんどんさとみとの距離を詰めていて・・・?今回は、琉生のお話しです。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます
「琉生さーん」
帰り支度をしているとまたあの声が・・・。俺は軽く頭痛を覚えながら振り向いた。
「お前、今日、直帰って言ってなかったっけ」
大きな段ボールを抱えながら志田がデスクに向かってきた。
「そーなんですけど、荷物多くて。家に持って帰るの嫌だったんで、置きにきたんですよ」
イベントで使ったであろう荷物をドン、っと置くと、志田はわざとらしくふうっと深呼吸をした。
俺は無視してカバンに荷物を入れて帰ろうとした。今日はまだ21時だからそんなに遅いほうじゃない。引っ越し準備もあるし、さっさと帰ろう。
と思っていると案の定志田が声を掛けてきた。
「そうそう、こないださとみさんと話したんですけど、今度飲みに行きません?」
「は?」
俺はヤツを睨む。なんでその名前がまたお前から出る!!
「いやー、会社の飲み会とかも最近潰れてばっかじゃないですか。忘年会とか期待してたのになくなっちゃったし」
そーじゃなくて。まだお前さとみのこと追いかけてるわけ?
とは言えないので、仕方なく相槌を打って詳細を聞くことにした。
「うん、まあ、お前そういうの好きそうだもんな」
「飲み会自体好きなんですけど。ただ、時節柄、なかなか大っぴらに開催できないじゃないですか」
志田が空を仰ぐ。いちいち大げさなやつだなあ。
「自粛してろよ、お前も」
うちの会社自体、感染症対策をしていればOK、とうやむやになっているところもあるが、目立った行動は避けたい。というか、さとみとコイツと飲み会なんて絶対無理だから、何としてでも阻止しなければ、
「そんなこと言わずに。で、男2で女性がさとみさんだけじゃ気まずいかなと思って、デザイン部の由衣さんも呼ぼうかなと思って」
「~~~~~~!!!つーか、何でお前からその名前が出るんだよ」
コワい!コワすぎる!なんで俺の身辺の女ばっかり出てくるんだよ。
考えたくないけど、俺とコイツ、好みが似ている・・・?!
「え、俺、由衣さんと仲いいですよ?」
うん。お前に掛かったら、この会社の人全員仲いいってことになるのはわかっている。社長とだって仲良しこよし、だろうよ。しかし、しかしだ。
「お前がさと・・佐倉さんを呼びたいのはわかった。が、別に佐倉さんと由・・・井川さん仲いいわけじゃないし、関係なくね?そもそもなんで俺がその飲み会に呼ばれてるのかもわかんないし」
「あ、いや、まあ、それは俺がさとみさんと由衣さんと飲みたいだけなんで、琉生さん無理なら、3人で飲むんでいいです」
「いや、そういうことじゃなくて」
飲み会自体をするなと言いたい。察しろ!雰囲気で察しろ。
「あ、やっぱ意中のさとみさんいるのに元カノとか居たら気まずいですか?」
「はあ?!」
「俺聞いたことあるんですよねー、由衣さんと琉生さん、入社当初めっちゃ仲良かったらしいじゃないですか。付き合ってたんじゃないかって噂ですよ」
誰だよー!そんな噂流してるの。つーか、事実っちゃ事実だけど!!さとみにはひた隠ししてるのに、コイツに知られてるってマジでダルい。由衣にも口止めしているからそこから漏れるはずはないんだけど。
「井川さんとは付き合ってないし、佐倉さんは意中でもないッ」
「ふーん、じゃあ、飲み会、いいじゃないですか」
「絶対ダメ。行かない。つーか、それこそ感染とかしたらヤベーじゃん。やめとけよ。これ先輩命令な」
「うーん、そっかあー」
ワンコがしゅんとなってる。
「じゃあ、もうちょっと落ち着いたらまた誘いますね!」
「いや、俺週末引っ越しだから、しばらく落ち着かんわ」
「引っ越しするんですか!へえ!なんで?中途半端な時期ですね」
うわー。ミスった。要らん情報を話してしまった。
「彼女と住むんだよ。悪いか」
さとみには悪いが、面倒なので、これくらいは言ってもいいだろう。
「あ、琉生さん彼女いたんだ」
志田が心底驚いた、という顔で真正面から凝視された。
「その驚き方失礼じゃね?」
「そっかー、よかったー。じゃー、俺も帰ります!」
えっと、絶対お前、ライバル減ったって思ってるよな?あ?
俺の彼女、さとみだからな。
くっそー。さとみに口止めされてなかったら絶対言うのに!!
やっぱりこの件はさとみともう一度相談だな。
ウキウキしながら帰っていく志田を見ながら、俺は心に誓った。
*** 次回は29日(金)15時更新予定です ***
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