私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #46 Jun Side
アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。それを知らずにさとみを口説いている志田潤が二人の関係に気付く。潤は琉生に片思いをしている由衣と結託して、自分と付き合えるように画策している。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます
さとみさんとの関係を聞かれてから、琉生さんはほぼ口をきいてくれなくなった。
その代わり、さとみさんとはLINEのやりとりが増えた。うん、いい調子。このまま少しずつ関係を深めていければいいのだ。
俺は、数週間前の自分の愚行を後悔しつつ、少しずつさとみさんからの信頼回復に努めた。
琉生さんとさとみさんは、一緒に住んでいるとはいえ結婚しているわけじゃない。結婚しててもダメになることもあるだろうし。
つまりまだまだ俺が入る余地があるってこと。
最初はスタンプだけ返していた俺も、少しずつ会話的なものを送るようになっていった。
今日は金曜日。だが、終日クライアント先に行っていて、さとみさんのところには行けなかったので、帰宅してからさとみさんにLINEをしてみた。
「今日は総務に行けず、残念でした。来週はまた覗きにいきます」
10分くらい経ってから返信が来た。
「お疲れ様。週末だからゆっくり休んでね」
絵文字やスタンプは入らない、いつものシンプルなさとみさんのLINE。
あんまり返しすぎてもがっついているように思われるかも、と思い、俺は控えるようにしていた。
うん、今はこれで十分だ。
今日のミッションを終えた、と思い、俺はスマホを閉じた。
飯でも食うか、と思って、冷蔵庫に向かおうとすると、LINEが光った。さとみさん?
開いてみると、由衣さんだった。
「明日の夜、空いてない?」
ん?なんだろう、デートのお誘いだろうか。
「空いてますよー。フリーです」
「合コンするんだけど、男子が1人来れなくて。来ない?」
んー・・・とちょっと考えてから、俺は返事を打った。
「いいですよ。何対何ですか?」
「3、3」
数字に続けて、由衣さんと女の子3人の写真が送られてきた。
二人とも思っていたよりも、可愛い。俺の心はOKに傾いた。
「男性は?」
「私の友達」
「俺行って大丈夫ですか?」
「あんたなら大丈夫でしょ」
いろんな意味にとれる“大丈夫”だったが、行くことにした。
「待ち合わせ場所、ここだし」
由衣さんから店の地図が送られてきた。由衣さん、琉生さんのこと好きなのに、合コンはしてるのかあ。なんだか、由衣さんが常に獲物を狙っている猛獣に見えてきた。さしずめトラかライオンか。
俺は、“OK”としている犬のスタンプを送って、スマホを閉じた。
***
「あー。ここ、ここ」
待ち合わせから10分くらい遅れて、由衣さんの合コンの店についた。
猛獣、いや、由衣さんが、奥の席から手を振った。
テーブルにいた全員がこっちを見て、女の子二人はペコリと会釈した。男性二人は、何者?という感じでこっちを見ていた。
「やー、すいません。遅れちゃって」
「何、飲む?」
「あ、ビールで」
「了解」
テキパキ、手慣れた感じで由衣さんはウエイターさんを呼んだ。
「すいません。遅くなって」
俺は女の子たちではなく、男性陣に謝った。人数合わせで来ているとはいえ、敵視されたり、心象が悪いのは場を悪くする。
「ああ、いいよ。全然。こんなの遅れたうちに入らない」
由衣さんの向かい側に座っている眼鏡の男性が言った。
隣の茶髪でちょっとチャラそうな男性も、そうそう、という感じで頷いてくれた。
それを確認して、俺は女の子のほうを向く。
「志田潤です。よろしくー」
「あ、よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
女の子はどっちも似た雰囲気で、区別がつかなそうだった。
「んじゃ、紹介するね」
飲み物を待っている間、由衣さんがメンバーの紹介を始めた。
「男性が、どっちも私の大学からの友達。サークルで一緒にいたヤマダくんと、スズキくん」
うわああああ。ヤマダとスズキとか、絶対どっちがどっちか分からなくなる!
「ヤマダです。よろしく」
眼鏡くんが言った。なるほど、眼鏡くんがヤマダね。
「スズキです」
茶髪くんが会釈する。
「なんのサークルだったんですか?」
「サッカー。由衣はマネージャー」
眼鏡のヤマダくんが答えてくれた。ヤマダくん、親切な人そうだな。
「女子が、マイとカナコ」
うわああ。こっちも由衣とマイとか絶対混乱するやつ。いや、さすがに由衣さんとは間違えないか。
マイと呼ばれたほうはふんわりと髪を巻いて、色白のお人形みたいな子だった。
カナコと呼ばれたほうは、よく見るとマイより髪は長く、雰囲気はちょっときつめ。目つきがそう思わせるのだろうか。雰囲気は由衣さん寄りかなあ。
俺は説明を聞きながら、そんな分析をしていた。
タイミングを見計らったように、飲み物が来て、それぞれに配られた。
「じゃあ、乾杯しますか。こんな風に集まれるようになってよかったね」
由衣さんがビールのジョッキを持ちながら、恐らく今、誰しも思っていることを口にした。
「じゃあ、カンパーイ」
各々のグラスやジョッキがカチンと鳴る。確かに、今まではご飯に行くにも、少人数でさっと、が当たり前だったから、こんな風に集まるのは久しぶりだ。俺もなんとなく、浮かれた気分になる。
「マイちゃんとカナコちゃんは、由衣とどういうつながりなの?」
今度はスズキがしゃべる番だった。
「高校の同級生です。部活もずっと一緒で。テニスだったんですけど」
マイが答える。
「へー、似合いそう」
スズキがニヤっとした。そこにすかさず由衣から突っ込みが入る。
「絶対スコート履いてるとこ想像したでしょ」
「スコート?」
眼鏡くんが聞き返した。
「あのミニスカートみたいなやつ」
スズキがめちゃくちゃ端的に説明する。
「あれ、スコートっていうんだ。いいよね、あれ」
「ほらー。もう。やめて、ホントに」
由衣が呆れたように言った。
「でもあれ、試合とかよっぽどの時しか着ないですよ。普段はほぼジャージ。まあ、テニスやってたっていうとほぼほぼ、その話題なんで慣れてますけど」
カナコが笑いながら言った。
「えー、そうなのかあ」
スズキが大ゲサに残念がった。
盛り上がらないようだったら人肌脱ごうかと思っていたが、俺の出る幕はなさそうだ。
俺はニコニコしながら、その4人を見ていた。
*** 次回は 3月22日(月)15時ごろ更新予定です ***
雨宮より:登場人物、ほぼ3人(さとみ、琉生、潤)で1年間連載出来るかなと思ってたんですが、自分が飽きてきたので違う人物を入れてみました。あ、ちなみにカタカナ表記の名前になっている人は全員雑魚・・・いや主要キャラではありません。私が気に入ったら、主要キャラに昇格するかもですw ずっとココナラで、挿絵を描いてくれる方を探しているんですが、最近ipad Airを購入したので、絵を描く練習しようかなーと思ったりしています。
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