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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #22  Jun side

アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。今回は、琉生の後輩、志田潤のお話しです。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます

さとみさんと年末、仲良くなってから、朝少し会社の手前で一緒になるとか廊下ですれ違う時も、挨拶プラス一言、話せるようになったのが嬉しい。

「おはようございます!」

今日も会社の100mくらい手前でさとみさんと一緒になった。

「おはよう。志田くん、最近早いね。」

「そう言ってるさとみさんも早いです」

カノンと別れてから朝ずるずるすることもなく、早く出られるようになっただけなんだけど。あとはリサーチの結果、さとみさんがこのくらいの時間に来ているらしいというのを知ったから。

「私は入社した時からの癖というか、みんなが来る前にいろいろ準備しておかないと落ち着かなくて」

さとみさんはイヤホンを外すと、カバンにしまってくれた。俺はそれを“話していい合図”だと思っている。

「そうなんですねっ。俺は夜あんまり残業しなくないので、終わらなかった仕事は適当に切り上げて朝やる派です」

「そうなんだ。それがいいよね。営業部の人、いつも遅くまで残ってるみたいだけど、疲れてると効率悪くなるから」

俺はさとみさんに合わせて、ゆっくり歩く。このまま会社に着かなくていいのにな。そう思いながら、歩く。

「そーなんすよ。琉生さんとか、ひどい時だと22時とか23時くらいまで仕事やってるらしくて、意味わかんないっす。彼女とかいないんすかねー」

「・・・・ど、どうかな?聞いたことないけど」

さとみさんが下を向く。ん?どうしたんだろう。

「琉生さん、あんま、そーゆー、プライベート教えてくれないんですよねー」

俺はそこが不満なんだよね。あと一歩、琉生さんと仲良くなれていない気がするのだ。

「そうなんだ。飲みに行ったりしないの?」

「まー、時節柄というか、あんま誘いにくいですよね」

「そうかあ」

納得、という表情でさとみさんが頷く。あ、そうだ、これは言っておかないと、ということがあったんだ。

「あの。俺言ってなかったと思うんですけど、彼女と別れたんすよ」

「へ、へえ・・・そうなんだ・・・ざ、んねんだったね・・・でいいのかなあ?」

さとみさんが気を遣ってくれて、言葉を選んでいる。俺は全然気にしてないので、大丈夫なんだけど。

「なので、フリーです」

「う、うん。で?」

「いつでも誘ってください」

は?という顔でさとみさんが俺を見る。うん、えっと、そういう反応は慣れてるから大丈夫です。

「えっと・・・私、彼氏いるっていったよね?」

おずおずとさとみさんが言う。

「聞きましたけど、別に会社の先輩と後輩的な感じだったら飲みに行くとかは普通じゃないですか」

「うん、まあ、そうなんだけど。それはまず横井くんと行ったらいいと思う。あと、私、彼氏以外の男の人とは一対一で出かけたりしないし・・・」

「あ、わかった!じゃあ、琉生さんと一緒に行きましょう!3人ならいいですよね?」

俺は名案だと思った。会社の自動ドアまで来てしまった。ほかにも何人か人が入っていくのが見える。これ以上込み合った話はしにくいか。

「え?え?いや、それはちょっと。その中に私が入るっていうのはなんか違うかなあと・・・女一人っていうのも・・・あと横井くんも嫌がるんじゃないかなあ」

いやいや、琉生さんよりさとみさんのほうが今、めちゃくちゃ嫌がっているじゃないですか。そんなに嫌がらなくても。若干寂しさを覚えつつ、俺は別な提案をしてみる。

「えー、琉生さん、嫌がるかなあ?じゃあ、琉生さんプラス、デザイン部の由衣さんとか一緒にどうですか?俺、結構仲いいんですよ」

「私、彼女とほとんど面識ない・・・」

「難しいな。ちょっと考えます」

残念ながら、総務のフロアについてしまったので、さとみさんとはここで別れてしまう。名残惜しいけど、あとはまた来週かな。

また話す口実を作らなくては。まずは琉生さんを口説いて、飲みに誘うことかな。

「う、うん?まあ、あの、頼んでないからね?私」

俺はそんなつれない反応をされつつ、聞こえないフリをした。

代わりにめちゃくちゃ笑顔で手を振って、総務を後にした。

*** 次回は1月25日(月)15時更新予定です ***

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