私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #18 Ryusei side
アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。後輩の志田潤が出てきて波乱の予感。営業部の部長斎藤はそんな3人をほほえましく見ている。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます
「琉生さん、次の会議の資料、共有フォルダに入れときますね」
「ん」
志田の顔を見ずに返事をしたら、案の定ヤツは絡んできた。
「なんか今日、冷たい・・・」
「いつもだろ」
俺は冷たく言い放つ。
「いや、いつも以上に機嫌悪い。なんかしました?俺」
しただろ!さとみにちょっかい出してるだろ!
・・・とは言えないので、黙っておく。
「ちぇ。俺、琉生さんと仲良くしたいのに」
椅子の背もたれをギコギコ言わせながら、志田が近づいてきた。
「そーゆーこと言うなッ。気持ち悪い」
ゲンナリしながら、俺は立った。
「どこ行くんすか。もうすぐ会議っすよ」
志田も一緒に立とうとしたので、俺は静止した。
「トイレだから」
「じゃ、俺も・・・」
イラっとして、俺は声を荒げる。
「だーかーらー、そーゆー女子みたいなことすんな」
一緒にトイレって、中学生の女子か。すると志田は分かりやすく、むくれた。
「あ、男女差別。そういうの、今、いけないんですよ」
「うるさいなあ、もう」
「前から思ってたんですけど、琉生さんもさとみさんのこと好きなんですか?」
「ち、ちが・・・ッ」
俺が全力で否定しようとした所で、斎藤さんが割って入ってきた。
「はーい、じゃれ合いはそこまで。あと3分で会議始まるから、便所でもどこでも行って、会議室来るように」
はーい、といって志田は素直に会議室に向かって行った。
斎藤さんは俺を見てウインクした。キモっ。昔の少女漫画か!
はー、恩売られたわ・・・。俺は志田と話している以上に疲れを感じながら、会議室に向かった。
***
「めちゃめちゃ斎藤さんに助けられてるじゃない」
さとみは白飯をよそいながらそう言った。
俺がストレスたまりすぎて週末まで待てずに、今日はさとみの家で夕飯を食べさせてもらうことにしたのだ。
「いや、もうマジでうざい」
「語彙なさすぎ」
「超ストレス溜まる」
「そんなのストレスのうちに入らない」
さとみは笑っているがこっちは厄介な二人がいる中で仕事しているわけで。
「いただきます」
俺は箸を取った。
「急に来るから、大したものないけど」
さとみはそんな風に謙遜するが、食卓に並べられた豚の生姜焼きと、サラダ、ひじきの煮物、味噌汁・・・最高すぎる。
牛丼屋で食べる定食とは全然違う。
「一緒に住んだら、俺も料理頑張るわ」
「まずはお手伝いからね」
さとみが笑う。
そう。真面目に家庭科や家の手伝いをしてこなかった俺は、大学で一人暮らしになっても一切の料理はせず。初めてさとみの料理を手伝おうとした時に、玉ねぎをどこまで剥いたらいいかわからず延々剥き続けた過去がある。
食事は外で食べるか、買うか(テキトーに暇してる女の子に作ってもらうか)だったから、さとみに手料理を食べさせてもらえるのが、随一の楽しみでもある。
志田には言えないけど、言いたい。羨ましがらせたい。
「俺の部屋だけど、1月末で退去できることになったから、最後の週の土日には大きい荷物運ばせてもらっていい?つっても、テーブルとかベッドは処分するから、服が入ってるチェストぐらいかなあ」
「TVは?うちの小さいし古いから、琉生の家の持ってきたら?」
「あー、そだね。ほぼアマプラしか見てないけど」
俺はさとみと夜な夜な映画とかを見て、団らんしている様子を思い浮かべて、ニヤニヤしてしまった。
「週末だけ会うのとそんなに変わらないかなって思ってたけど、新生活、楽しみだね」
さとみからそんな言葉が聞けるとは思ってなかったので、俺はめちゃくちゃ嬉しくなった。
「うん。で、今日、泊まってっていい?水曜だけど」
「なんにもしないなら、いーよ」
さとみがにっこり微笑む。
「う・・・」
先に釘を差されてしまった・・・
「わかりました」
淡い期待は打ち砕かれた。やられっぱなしはくやしいのでさとみを後ろから抱きしめた。
「今週末は家から出さないから」
はいはい、という感じでさとみが笑った。
*** 次回更新は1月15日(金)15時頃の予定です ***
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