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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #49 Jun Side

アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。それを知らずにさとみを口説いている志田潤が二人の関係に気付く。潤は琉生に片思いをしている由衣と結託して、自分と付き合えるように画策している。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます

由衣さんはなかなか合コンの仕切り上手だった。普段なら、俺もその役割を負うことが多いのだが、気配り、目配りが良くできている。俺も由衣さん以外に知り合いがいない中、気持ちよく過ごすことが出来た。

「志田はなんかスポーツやってなかったの?」

一通り自己紹介が済み、由衣さんが俺にパスを回してきた。

「高校まではサッカーやってましたけど、そんな強いとこじゃなかったんで、ヤマダさんたちみたいに大学はサークル入るまでじゃなかったですね~」

俺はヤマダ氏とスズキ氏をちらっと見た。

「へー、そうなの。じゃあ、サークル何やってたの?」

ヤマダ氏が尋ねてくる。

「テニスサークル、という名の飲みサーですかね」

「あー、わかるぅ。テニスって飲みサー多いよね」

カナコが同意してきた。

「だから私たち、大学ではテニス辞めたもん」

「でもコイツ、典型的に飲みサーに居そうなタイプ」

由衣さんが俺を指した。いやいや、すでにビール2杯目の由衣さんに言われたくないんですけど。

「やっぱ、テニスサークルとか飲みサーっていいイメージないです?」

「当たり前ですよぉ。いろいろヤバい事件とかあるし」

「俺は楽しかったけどなあ。まあ、テニスは・・・コートに立ったこともないけど」

そこでどっと皆が笑った。俺がいった言葉で場が沸くのは嬉しい。

「で、志田はそこで楽しい大学生活を送っていたわけか」

「まあ、そーですね」

由衣さんの言葉に同意したところで、皆にさらに笑いが起きた。

「あ、でもこの子うちらの2つ下だから。1年前までギリ、大学生」

由衣さんが俺のことをこの子呼ばわりしてきた。

「え、そうなんだ!大人っぽい。背、高いからかな」

マイさんが声を上げた。

「まだ1年目です」

俺がペコリと頭を下げると、かわいー、と言われた。

「スーツ似合ってる」

続けてそう褒めてくれた、マイさんとは気が合いそうだ。

「さすがに1年経ってますから」

それから、お互い仕事は何をやっているとか、当たり障りのない話が続いた。

出てくる料理も一通りそろったところで、スズキ氏が突っ込んできた。

「で、マイちゃんとカナコちゃんは彼氏いるの?」

「いないですー。私はちょっと前に別れたんで、由衣に合コンセッティングさせました」

カナコさんが答える。

「なるほどね。マイちゃんは?」

「あ、あたしも・・・フリーで」

あ、これは彼氏いるパターンだな。みんなが気づくか気付かないかのタイミングで言い淀んだマイさんを見て、俺はピンときた。由衣さんをちらっと見たが、料理をつついていてマイさんへのフォローはない。

「じゃあ、由衣も含めて全員、フリーか。おっと失礼。志田くんは?」

ヤマダ氏が俺に矛先を向けてきた。

「あ、フリーです。あ、でも片思い中の人がいます。会社で」

「バカ。そういう盛下がることいわないの」

由衣さんがたしなめてきた。が、由衣さんの言葉とは反対に、場が盛り上がる。

「え?!なにそれ!気になる!」

「その話、聞きたい!」

マイさんとカナコさんが食いついてきた。

「まさか・・・由衣じゃないよね?」

スズキさんが恐る恐る聞いてきた。

「ぜんっぜん、由衣さんじゃないです」

「きっぱり言うなっつの」

全否定した俺に由衣さんがかぶせてきた。

「会社の総務の女の人で、超美人なんです。可憐って言葉がぴったりな」

「そうなの?由衣」

スズキ氏が興味津々で聞いてくる。

「さあ。私はただのオバサンにしか思えないけど」

「オバサン?年上なの?」

カナコさんが俺に聞いてきた。

「32歳だけど、由衣さんと同い年くらいに見えます」

「つまり由衣が老けてるってことか」

笑いながら言うヤマダ氏に、由衣さんが殴る真似をした。

「そっかー。じゃあ、私もまだまだ捨てたもんじゃないな」

カナコさんがつぶやく。

「カナコの元カレ、年下なんだよねえ」

由衣さんが補足する。

「え、年下好き?じゃあ、俺たちダメじゃん」

ヤマダ氏が大げさに嘆く。

「そんなことないですよ!たまたま年下だっただけで、年下が好きってわけじゃないです」

カナコさんが否定した。

「いくつ下だったんだっけ」

マイさんがカナコさんに聞いた。

「3つ。春から社会人ですけど、まだ学生で。就職する会社で出会った同い年の子と付き合うからって言われて別れました」

「へえ。そうなんだ。もったいない」

ヤマダ氏はやたらカナコさんに絡む感じがした。なるほど、カナコさん狙いなのかな。

「ヤマダさんたちは彼女いないんですか?」

俺はヤマダさんに話を振った。

「いないねー。もう1年くらい。スズキは・・・しらねーな、最近どうなの」

「まあまあ。いないっすよ」

はぐらかしからの、否定。なるほど、スズキ氏も彼女か、それに準ずる人がいそうだなあ。俺は久々の合コンで、人間観察を楽しんでいた。

「由衣はどうなんよ。最近浮いた話、聞かないじゃん。前に言ってた“会社のかっこいい人”とはどうなったわけ?」

ヤマダさんが話を由衣さんにパスした。

「言わない」

由衣さんが不機嫌そうに言い切ったので、話が俺のほうに来た。

「志田くん、知ってる?」

「たぶん、その人、俺の先輩だとは思うんですけど・・・」

俺は話題の一環で、喋ってもいいかアイコンタクトを取ろうとしたら、由衣さんから素早く静止が入った。

「志田、それ以上なんか喋ったら、会社でコロス」

「だ、そうです」

俺が大げさに肩をすくめると、ヤマダ氏が笑って助け船を出してくれた。

「ははは、それじゃあ、それ以上聞くのはダメってことだな」

その後も、お互いの過去や恋愛話に花が咲き、楽しい合コンになった。気が付くと3時間を超えていた。

「あ、そろそろこのお店ラストオーダーだわ」

スズキ氏が言う。どうやら店の手配は由衣さんではなく、スズキ氏がしていたようだ。

「とりあえず、全員でLINE交換しといたら?付き合うとかどうこうは個人に任せるけど、またこのメンツで飲もうよ」

由衣さんからの提案で、LINE交換が始まった。

俺も加わっていいのかな、と思いつつ、ヤマダ氏やスズキ氏とも“一応”交換しておいた。

「じゃー、あとでグループ作っておくわ」

由衣さんがテキパキ仕切る。途中までは由衣さんが何杯飲んでいたか数えていたが、もうわからないくらい飲んでいた。

「楽しかったです。ありがとうございました」

女子二人が男性陣に御礼を言った。

「俺らも楽しかったよ。あ、志田くんも。君、おもしろいね。また男性だけでも飲もうよ」

ヤマダ氏が、女性陣だけでなく俺にも微笑みかけた。何、この人、めちゃくちゃイケメンじゃん。ただの眼鏡くんだと思っていて、侮っていた。

「あ、はい!ぜひ!」

俺はぜったいしっぽがあったらブンブン振っている、と思うくらい、ヤマダ氏に応えた。それから、それぞれの家や駅の方向に別れ、合コンはお開きになった。

*** 次回の更新は 3月29日(月)15時頃の予定です ***

雨宮より:今回の話は書いてて合コンしたくなりました。(人妻ですが)この小説を書き始めてからずっと、noteで若い子の恋愛話などをチェックしています。いいなー。キラキラしてるなー。出会いいっぱいあるんだろうなあー。って思ってたら、やっぱりコロナで学校もないし、仕事もリモートだし、アプリとかで恋愛する人が多いことにびっくり。私たちの時代もネットで出会った人はちらほらいましたけど「出会い系」ってちょっといかがわしいイメージで、隠している人、多かったんだけどな。

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