私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #7 satomi side
アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。社内恋愛中。週末はどちらかの家で過ごすことが多いが、今週は水族館でデート。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます。
イルカのショーを見て、もう1回ぐるっと水族館を回ったら、夕方だった。
「今日もさとみの家に行っていい?」
「あ・・・えっと」
正直、久しぶりに歩き回って疲れてしまった。出来たら1人でゆっくり休みたいと思ってしまう。
どうしても琉生と一緒だと、夜更しになってしまうから。
「月曜日、午前中に会社に出さないといけない資料があって、出来たらこの週末中に作っちゃいたいなと思ってて・・・」
「あ、そっか」
咄嗟に嘘を付いてしまった。仕事とか用事とか、正当性のあることを言わないといけない気がして。
「うん、じゃー、俺も今日は自分の家、帰るわ」
「ごめんね」
「全然。資料作り、頑張って」
「ありがと」
琉生はそのまま乗り換えの駅で別れた。
好きだしずっと一緒に居たいと思うけど、一緒に居る時間が長すぎると1人になりたいと思ってしまうこともあり、複雑だ。
付き合った当初から琉生は結婚したい、結婚したいと言ってくれるけど、そこに素直にうんと言えない自分がいる。
結婚したらどちらかが死ぬまで一緒にいるわけで・・・
会社もあるから24時間一緒に居るわけではないけど、耐えられるのかなと考えてしまう。
そんなことを考えている時点で、私は結婚には向いてないのか。
この心配を琉生に言ったら笑われるだろうけど、25歳の琉生の考える結婚と、32歳の私が考える結婚にはギャップがあるのは確かだ。
まして年の差を考えると、結婚相手は琉生ではないのでは?もっとお互い相応しい人がいるんじゃないかという思いは拭えない。
反面。琉生と一緒に居る時間が長くなればなるほど、いいところも見えてくるし、心地よくなっていることも自覚している。
みんなどこで結婚するかしないかって決めてるのかなあ。
周りでも何人か結婚している人がいるが、琉生にも前の彼氏にも「これ」という決め手がない。
あと一駅で、自宅の最寄駅に着くというところで、ピロンとスマホが鳴った。
見てみると、産休中の総務の先輩、光さんからのLINEだった。
「子供の保育園、決まったよー!春から復帰します!」
かわいい赤ちゃんの写真とすっぴんの光先輩の写真とともに送信されてきた。
私もすかさず返信する。
「わあ、おめでとうございます」
「不安もあるけどね、やるっきゃない」
「楽しみにしてます!」
「さとみんは彼氏できた?」
あ・・・言ってなかったっけ。そういえば。
どうしよう。一応、琉生とはお互いに社内の人には内緒にしておこうということになってる。
バレたらバレたでいいんだけど、別れた時に周りから変に気を使われるのが嫌、というのがお互い一致した意見からだった。
でもいない、というのも嘘をつくことになってしまうから嫌だなと思ったので、どっちとも取れる返信をした。
「好きな人は出来ました」
「そっかー!いいね!」
ポンっと、かわいい猫とハートがくっついたスタンプが送られてきた。
私も「Thank you」のスタンプを返して、会話は終わった。
光先輩も忙しいんだろうな。
それ以上LINEが続く気配はなかったので、私はスマホをかばんにしまう。
光先輩は社内結婚だから、いつか、相談してみよう。
そう思った時にまたピロンとスマホが鳴った。
琉生からだ。
「家着いた。さとみがいないからさみしい」
いやいや、15分くらい前まで一緒にいたじゃない。
そう返信しようとして、思いとどまった。私、琉生をちょっと、甘やかしすぎてる?
何か返信しようと思ったけど思いつかなかったので、
“またね”
のスタンプを押しただけで、私はスマホをかばんにしまった。
今夜は気づかなかったことにして、あとの返信はしないようにしよう。
*** #8へ続く 次回は2020年12月16日(水)15時更新予定です***
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