私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #23 Satomi side
アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。今回は、さとみのお話しです。前回の潤との会話でさとみがどう感じていたのか?お楽しみください。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます
「おはようございます!」
今日も志田くんと会社の手前で一緒になった。最近よくこの時間に会う。
「おはよう。志田くん、最近早いね。」
「そう言ってるさとみさんも早いです」
「私は入社した時からの癖というか、みんなが来る前にいろいろ準備しておかないと落ち着かなくて」
私はイヤホンを外すと、カバンにしまった。
「そうなんですねっ。俺は夜あんまり残業しなくないので、終わらなかった仕事は適当に切り上げて朝やる派です」
「そうなんだ。それがいいよね。営業部の人、いつも遅くまで残ってるみたいだけど、疲れてると効率悪くなるから」
私は琉生の顔を思い浮かべながら、答える。
「そーなんすよ。琉生さんとか、ひどい時だと22時とか23時くらいまで仕事やってるらしくて、意味わかんないっす」
志田くんの口から琉生の名前が出たので、心臓が口から飛び出るかと思うくらいびっくりした。
「彼女とかいないんすかねー」
思わず何か知っているのか、と思ったけど、そうではなかった。まあ、そうか。琉生は直属の先輩になるし、な。
でも彼女については・・・私からは言えないし・・・・
「・・・・ど、どうかな?聞いたことないけど」
毎回罪悪感はあるけど、仕方がない。私はいつものようにしらばっくれた。
宙を仰ぎながら、志田くんは残念そうに呟く。
「琉生さん、あんま、そーゆー、プライベート教えてくれないんですよねー」
うん、そうだろうなあ。まあ、その残念そうな顔・・・琉生には言っておいてあげようと思うけど・・・。
「そうなんだ。飲みに行ったりしないの?」
琉生は行かなそうだけど、“一般的な会話”として、そんな質問をぶつけてみた。
「まー、時節柄というか、あんま、今ドキ誘いにくいですよね」
「そうかあ」
なるほど。志田くんなら誘いまくっている気もしたけど、そういう事情もちゃんと考慮しているんだ。ふむふむ、と納得していると、志田くんがおもむろに切り出してきた。
「あの。俺言ってなかったと思うんですけど、彼女と別れたんすよ」
会話の流れから唐突なのでびっくりしたのと、それに対してどう反応していいか分からず、思わず私は言葉に詰まった。
「へ、へえ・・・そうなんだ・・・ざ、んねんだったね・・・でいいのかなあ?」
私は言葉を選びつつ、返事をした。そんなに仲がいいわけでもない人に、ド直球でプライべートなことを報告されても、反応に困る。志田くんは琉生や私の周りにいる人とは違いすぎて、どういう距離感で話したらいいのか、わからない。
「なので、フリーです」
えっと・・・うん・・・薄々わかってたけど・・・やっぱり好意持たれてるよね、私。だけど、私には琉生がいるし、どうにもしてあげられない。私はわざと気付かないふりをして、返事をした。
「う、うん。で?」
というか、これしか言えない。
「いつでも誘ってください」
あー・・・。すごい、まっすぐだな、この子。
「えっと・・・私、彼氏いるっていったよね?」
トーンは遠慮がちになってしまったけど、ちゃんと言った。この子にはやんわり言っても気づかないというか、気にしなさそうだから。見込みがないってことはちゃんと言わないといけないと思った。
「聞きましたけど、別に会社の先輩と後輩的な感じだったら飲みに行くとかは普通じゃないですか」
志田くんは全然普通な表情をして、食い下がってくる。めげないな!この子!
「うん、まあ、そうなんだけど。それはまず横井くんと行ったらいいと思う。あと、私、彼氏以外の男の人とは一対一で出かけたりしないし・・・」
とにかく、私はいけない、ということで押そう。そうしよう。
「あ、わかった!じゃあ、琉生さんと一緒に行きましょう!3人ならいいですよね?」
「え?え?いや、それはちょっと。」
予想外の回答に私は慌てた。なんでそこで琉生が出てくる~!!絶対嫌がるに決まってるじゃないのー!
「その中に私が入るっていうのはなんか違うかなあと・・・女一人っていうのも・・・あと横井くんも嫌がるんじゃないかなあ」
さりげなく、なっていたかは分からないけど、とにかく私は誘われてもいかないということを伝えなければ。私は必死で言葉を選んだ。
「えー、琉生さん、嫌がるかなあ?じゃあ、琉生さんプラス、デザイン部の由衣さんとか一緒にどうですか?俺、結構仲いいんですよ」
また斜め上の提案が・・・。由衣さん・・・。ただの飲み会だったら一緒でもいい。もともと必要最低限の話しかしたことがない人なんだけど。
入社当初から琉生と仲良かったという話も聞いているので・・・あんまり気乗りしない。
「私、彼女とほとんど面識ない・・・」
嫉妬というほど重いものでもないけど、何でもない人のように扱ってその場に入れる感じはしなかった。
「難しいな。ちょっと考えます」
志田くんはまた考え込んでいる。なんだかんだ話しているうちに総務についてしまった。志田くんとはここで別れることになる。
「う、うん?まあ、あの、頼んでないからね?私」
私はそういったけど、伝わってるのか伝わってないのか、志田くんは返事の代わりにめちゃくちゃ笑顔で手を振って、総務を後にした。
***次回は1月27日(水)15時更新予定です***
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