私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #10 Ryusei side
アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。社内恋愛中。週末はどちらかの家で過ごすことが多い。初めての二人で過ごすクリスマスまであと数日。二人はどんな風に過ごそうと考えているのか。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます
特にすることもなく、ベッドでうとうとしていると、玄関のチャイムがなった。
「・・・?なんか頼んでたっけ」
琉生の家にくる訪問者といえば、宅配業者しかない。
「お届け物です。こちら、お間違いないですか?」
「はい」
小さな箱を受け取り、差出人を見て合点が行った。
さとみへのプレゼントをネットで注文していたのだった。
「わー・・・すっかり忘れてた。今日さとみと会ってなくてよかった」
さとみの家に行っていたら再配達になっていただろうし、さとみが琉生の家に来ていたらサプライズにならない。
セーフ。
梱包の段ボールから小さな箱を取り出す。
箱はすでにラッピングされていて、中身が確認できない。
「やば。ラッピング依頼したら、開けられないのか。大丈夫かな」
渡して中身が入ってないようなことがあったら、シャレにならない。
いや、まあ、そんなに安いものでもないし、大丈夫だろう。梱包をした店員であろう人を信用することにして、そっと梱包の箱にもどした。
24日、会社に行くときに忘れないようにしなければ。
平日はさとみが家にくることはまずないので、忘れないように玄関先に置いておくことにした。
さて、午後は何をしようか。と思っているとピコンとLINEが鳴った。
大学時代のサークルで作ったグループラインだった。
「俺、結婚することになったわ」
サークル内で人一倍モテていたダイスケからのLINEだった。矢継ぎ早にトークがレスで埋まっていく。
「マジで?おめでとう!」
「はやくね?」
「相手、誰?」
「出来婚?」
おめでとう、の文字やスタンプが飛び交う中、詳細が気になる、というレスも入ってくる。
「相手、サキ」
ダイスケからの回答に、またトークが埋まっていく。
「うそ、まだ付き合ってたんだ」
まだってサキに失礼でしょー、という女子のレスが付く。
「長くね?5年?6年?」
「7年」
「え、18から付き合ってたんだっけ?」
「ちょ、その間、ダイスケの彼女何十人知ってるんだろ俺」
「それ言ったらあかんやつ」
これ、サキも入ってるグループな気がするんだけど・・・。会話についていけず、琉生は茫然とトーク画面が流れていくのを見ている。
あのダイスケが、結婚。
琉生もまあまあ遊んでいたほうなので、一緒に女の子と盛り上がっていた記憶が蘇る。琉生以上にモテるダイスケのことなので、きっと30歳くらいまではそのままなんだろうなあと思っていたので、このタイミングでの結婚は意外だった。
「はい、ご想像通り、サキに子供が出来まして」
ダイスケのレスに一層LINEが盛り上がる。
「キャー!おめでとう!」「性別どっち?」「まだわかんないでしょ」
「サキ元気なの?」「会いたい!年末みんなで会おうよ」
「この時期やばくね?」「でも話したいよー」
「よくここまで耐えたよねー、サキ。泣ける!」
「結婚式は?するんだったら行くよね、みんな」「いくー!呼んで!」
誰々が結婚したらしい、というのは卒業後からちらほら聞こえてきていたが、身近で仲が良かったヤツが結婚するのは初めてで。恐らくこのグループにいる誰しもがそうなのだろう。
この盛り上がりですら、現実味がない。そう、ファンタジーだった。
「結婚の決め手って、子供だけ?」
琉生が初めてこの話題に参加した。ダイスケからはすぐレスがあった。
「まあキッカケはそれだけど、サキしか考えられなかったかな。最初から」
サキもいるLINEだからそういっているのか、ホントにそう思っていたのか。
「ダイスケ、実は純愛だった?!」
「いろいろ世話になってますし」
「ダイスケの面倒見れるのはサキしかいないよね」
琉生を置いて、またトークが流れていく。
スゲーな、ダイスケ。自分もさとみと結婚したい、する、と思っているが、実際にそれを決断して、これから実行していくダイスケを想像したら、自分はまだまだだと思った。
全然リアリティがない。
そこでグループから抜け出して、ダイスケにDM送ることにした。
「年末、飲もうぜ」
「いいよ」
即レスだった。
聞きたいことは沢山ある。サキと7年付き合って、(その間たくさんの女の子とも付き合って)どうしてサキに結婚を決めたのか。
いや、子供が出来たってことはわかっているんだけど。
昔つるんでいた自分としても、今恋愛で悩んでいる自分としても聞きたい。
あれ?俺、悩んでるのか?
ふとそんなことを考えつつ、全く終わりの気配がないサークルのチャットの盛り上がりを見ていた。
*** 次回は23日(水)15時更新予定です ***
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