思い出します。小学校の玉入れ競技
祇園甲部からほど近いところに、恵美須神社があります。
その名の通り、商売繁盛のゑびす様をお祀りする神社で、毎年、正月明け、一月の「十日えびす」には、毎年境内に人があふれんばかりになります。
この恵美須神社では、面白い祈願の方法があります。
二の鳥居の上部に、縁起物の「熊手」を模した「箕」が掲げられています。
普通、神額が掛けられているところです。
その神額の真ん中には、ニコニコと満面の福笑みを浮かべていらっしゃる恵美須さんの顔。
願い事を唱えつつ、その顔にめがけてお賽銭をほうり投げるのです。
見事!「箕」の網の中に納まったなら、その願いがかなうと言われているのです。
私も、何度か挑戦しましたが、一発で入ったことはありません。
入らないと、硬貨が落ちて来て、コロコロと転がります。
それを拾って、また投げる。
また入らない。
真夏だと、汗だくになりけっこう疲れます。
ふと、小学生の頃やった、運動会の玉入れ競技を思い出しました。
あんまり入らないと、他の参拝者に見られるのが恥ずかしくなります。
近くに親子連れがいたりすると、自意識過剰になってしまい、
「ねえねえ、パパ。あのオジちゃん、ちっと入らないね」
「そうだね、よっぽど運動音痴なんだろうね」
なんて、ひそひそ話をしているんじゃないかと、気になって仕方がなくなるのです。
ようやく入って、ホッとします。
でも、でも・・・はたと考えました。
そりゃあ、何度も投げれば、いつかは入りますよね。
10回目に入ったからといって、願い事が叶うのかしらん。
いやいや、諦めずに何度も何度もトライする努力を、
きっと恵比須様は理解して下さるものと信じています。
「京都祇園もも吉庵のあまから帖」第一巻の二話で登場します。