舞妓さんに、頼みにくいお願いごと
祇園でお茶屋遊びをし始めた頃、なかなか言い出せないことがありました。
「写真を撮ってもいいですか?」
という一言です。
こちらは、花街の習わしをほとんど知りません。
「無粋な人やなあ」
と、口には出さなくても、心の中で思われてしまうのではないかと思ったのです。
でも、そんな心配は、すぐに解消しました。
連れの友人が、まったく躊躇することもなく、
「写真いいですか?」
と尋ねたからです。
すると、
「へえ、もちろんどす」
という返事。それでも、あんまり何枚も撮っては、ミーハーだと思われそうなので、遠慮しつつも2、3枚に留めたことを思い出します。
その後、芸妓、舞妓さんたちの着物や帯の美しさに魅かれるようになりました。
ある時、舞妓さんの「帯」が、あまりにも綺麗で、写真が撮りたくなりました。
でも、正面ではなく、顔の写らない後ろ姿です。
「帯を撮ってもいいですか?」
とお願いして、失礼にならないだろうか。
迷いに迷って、頼みました。
すると、案ずるが産むが易し。
「へえ、もちんどす。うちもこの帯、えろう好きなんどすえ」
と、にっこり。
その一枚が、コレです。
紫の地に、大柄の蝶が雅に艶やかに舞っています。