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元祖インスタ映え・喫茶ソワレのゼリーポンチ

子どもの頃、ときどき父親に喫茶店に連れて行かれました。
もちろん父親は、コーヒーを頼みます。
私は、コーヒーなんて苦くて飲めませんから、ソーダ水を注文してもらいます。
クリームソーダではありませんが、それでも充分に「ご馳走」でウキウキしま
した。
お店の人に訊かれます。
「ぼく、何色がいい?」
指を差すカウンターの後ろの棚を見ると、いくつもの色のシロップが並んで
います。
 イチゴの赤か、メロンの緑か悩みます。
なかなか決まりません。
 「バイオレットも綺麗よ」
 「バイオレットって?」
 「紫色のこと」
 「それにします」
テーブルに運ばれて来たバイオレット色のソーダ水は、なんだか高級感が漂っていて、大人の飲み物のような感じがしました。
 
さて、祇園にほど近い、西木屋町通りに「喫茶ソワレ」はあります。
昭和23年開業のレトロな雰囲気が人気で、いつも行列ができます。
このお店の名物は「ゼリーポンチ」。
1975年からあるメニューということなので、「インスタ映え」ブームが起きるずっずっと前から「映え」続けて来た商品です。
目の前に置かれた「ゼリーポンチ」を見ると、幼い日に父親に連れて行かれた喫茶店が思い出されます。
「喫茶ソワレ」の店内は、青色の照明が使われています。
その青色にグラスの中の、赤、緑、黄など5色のゼリーが眩しく浮かび上がり、童話の世界へでも誘われるような不思議な気分になります。
 
「どの色のゼリーから食べようかな」
幼い日のことを思い出しつつ、スプーンを手に取って悩むのでした。


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