京都では6月30日に水無月を食べるのが習わし
遥か昔のことです。
忘れもしない6月の30日。
梅雨の晴れ間でした。
仕事で京都を訪ねた際、帰り道に乗ったタクシーのドライバーさんから、
「いいお寺があるから、寄って行かれませんか?」
と勧められたのが源光庵でした。紅葉の名所です。
「紅葉の時期じゃないし・・・」
と言うと、
「こういう空いている時期が一番ええんですよ」
と。
たしかに、紅葉狩りに出掛けても、混雑に疲れてしまうこともしばしばです。
源光庵は、「悟りの窓」と呼ばれる丸い形の窓と、「迷いの窓」と呼ばれる四角い形の窓で有名です。また、本堂の天井は、伏見城の遺構で、落城の悲劇を伝える血天井。小さなお寺ですが、見どころいっぱいの名刹でした。
さて、帰ろうとして靴を履き始めると、「お抹茶とお菓子」という貼り紙が目に留まりました。そこで、お寺の方と目が合ました。住職の奥様でしょうか。
「召し上がって行かはりますか?」
と勧められ、
「はい」
と即答していました。
お茶菓子に出されたのが、三角の形をした「ういろう」でした。その時、無知な私は、訊きました。
「これは何と言うお菓子ですか」
今から思うと、顔から火が出ます。
「水無月いいます」
お寺の女性は、この水無月について、謂れを説明してくれました。
水無月は白の外郎生地に小豆をのせたもの。
上部にある小豆は悪魔払いの意味があり、三角の形は暑気を払う氷を表しているといわれていること。
京都では1年のちょうど折り返しにあたる6月30日に、この半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願する意味から、「夏越祓(なごしのはらえ)」という神事を行い、この水無月を食べるのが習わしとのこと。
「今日は、その6月30日やさかい、水無月をお出ししました」
「あっ!そうか6月30日だ」
「三角の形いうんにも理由があります。ちょうど一年の半分いうことで、四角いういろうを三角に切ってあるんです」
「なるほど!」
なんという洒落た謂れでしょう。
残念ながら、遥か昔のことで、その時はスマホなるものは世の中に存在せず、写真も撮れませんでした。
写真は、京都駅新幹線コンコースにある「宝泉」さんの水無月です。
一緒に出される「雁が音茶」と抜群の相性でした。