CoCシナリオ『染まる手』
PL1-3人、1-2時間ホラー寄りシナリオ
推奨技能【ナビゲート】【図書館】
活躍する技能【コンピュータ】【オカルト】
初夏の候、金曜日。
あなた方はある交差点で信号待ちをしている。
賑やかな声に目をやれば
たくさんの幼児とその引率の保育士だろうか、
少し汗ばむような気温の中
楽しそうに列を成していた。
【アイデア】もしくは【ナビゲート】
この近くに大きな運動公園があり、
そこに向かっているのではないかと
察することができる。
【アイデア】もしくは【目星】
子供たちの手の先がみな
黒色に汚れていることがわかる。
(サインペンで描き染めたような黒色)
数人の子供たち(PL数の2倍+1)が
歓声をあげて道路に飛び出す。
信号は赤を示しており、
横からはトラックが
とても止まれないスピードで直進している。
【DEX*3】で二人子供たちを
捕まえることができる。
(失敗しても一人は捕まえることができる。)
悲鳴のようなブレーキ音に
鈍い衝突音が重なって聞こえた。
あなた方の目の前に
赤い血だまりが広がっていく。
SAN値チェック1/1d4
周囲は騒然としていた。
急ブレーキで止まったトラックから
慌てて運転手が降りて来て
状況を確認しようとしている。
パニックを起こした子供たちが
「だってあかねちゃんが、」
「あかねちゃんがこっちに来てって」
と保育士に訴える声が聞こえる。
あなた方の腕の中の子供も
パニックを起こし泣き叫んでいた。
悲鳴と泣き声の喧騒に混じって
背後から声が聞こえた気がした。
「じゃまされた」
男女ともつかない
その幼い声の持ち主を探そうとしても
泣き声や子供の無事を確認する
大人たちの焦った声に
掻き消されてままならない。
やがて現場は少しずつ落ち着きを取り戻し、
あなた方も事情聴取後に
日常へ戻っていくだろう。
場面は変わりその夜、帰宅途中の道でのこと。
何かが道の中央に落ちている
近づいて見ればすぐに正体がわかるだろう
だがそれは異様な姿をしていた
四肢全ての関節が逆に折れ曲がり、
頭部でさえ反対方向にねじられている。
それは薄汚れた黒い犬の死体だった。
SAN値チェック0/1
【アイデア】もしくは【ナビゲート】
犬だったものはあなたの家の方角へ
なにも映さない虚ろな眼を向けていた。
今日の夜は蒸し暑い。
君たちは何をするにも怠く、
体が重く感じるだろう。
技能をひとつだけ降ることができる。
【図書館】【コンピュータ】
(キーワード指定で+20%)
とある掲示板の記事を見つける。
それは
「こどもが爪先を黒く塗る癖ができた」
「クレヨンや絵の具で手の先を
黒く染めて遊んでいる」
「実在しない友達を追いかけたり
ひとりで隠れ鬼をしたりする」
といった子供の異常行動についてだった。
【オカルト】
(キーワード指定で+20%)
「あかね様」という存在についての
記事を見つける。
子供の姿で現れ、なんらかの形で
印をつけたものを三つの夜のうちに
どこかへ連れていくとの昔話だ。
どうやら同じ県内の社に祀られているらしい。犬を嫌うためか、
その社の近くでは失踪した犬の
変死体が時折発見されるとのこと。
いまいち内容がぼんやりしているせいか
コメント欄はあまり盛り上がらずに
それ以上の情報は出ていない。
暑さのせいか浅い眠りの中で
あなた方は同じ夢を見る。
それは長い坂を登る夢。
両手を幼い子供達に引かれながら歩いていると
朽ちかけた鳥居が見えてくる。
鳥居にかけられているしめ縄がいびつだ。
風もないのにゆらゆらと不気味に揺れている。
【目星】もしくは【アイデア】
あれはしめ縄ではない。
何かの臓物が重ね合わされ
鳥居にかけられている。
赤黒く生々しいそれは
未だ生きているかのように鼓動している。
SAN値チェック0/1
嫌な予感に寒気を覚えながらも
自然と足は進んでいく。
もはや両手は引きずられるように
強い力で鳥居へ導かれていた。
鳥居をくぐるとき、
ぽたぽたと生暖かい何かが落ちてきて
身体を濡らす。
朽ち果てた社が目の前に見え、
赤い着物の幼女があなたの目の前に現れる。
「つぎはおまえにするよ」
あの交差点で聞こえた声が囁き、
そこで目が覚めた。
心臓は全力疾走でもしたかのように
ばくばくと早鐘を打っている。
まだ捕まれているような感触に両手を見れば、
薄暗い部屋の中でも異変に気付く。
爪先から手首まで
黒い痣のようなものがついている。
こすっても拭いても取れることはない。
暑かったはずの部屋がとても寒く感じる。
以上のことから、SAN値チェック発生0/1。
時刻は深夜3時。
これ以上眠ることは難しそうだ。
【図書館】【コンピュータ】
(キーワード指定で+20%)
(一時間に一回振れる)
SNSで過去同様の夢を見たことを
投稿している人物がいたことがわかる。
「気持ち悪い夢だった」
「痣がだんだん濃くなっている」
「お寺さんからも神社からも
何もないと言われた」
「県立図書館に民俗資料があるらしい、
調べてみる」
「壊すしかない、
早くしないと間に合わない」
「見つからなかった」
「本当に連れていかれるのだろうか」
それ以降の投稿はない。
日付は4年前で止まっている。
【アイデア】
夢を見たという投稿から止まるまでの間が
2日間であることを確認できる。
【オカルト】
奇妙な事件を取りまとめているサイトに
同県内で起こった事件が取り上げられている。
昭和XX年、都井康男(34)狂死せり
1月20日、かねてより
軟禁していた児童15名を殺害、
をち池に落とし遺棄する。
のちに自身の爪にて腹部を裂き臓腑を広げ
池の北部方面に存在する社にかけ自害。
記事は簡潔に纏められており
出典元は「阿品町郷土民俗史」となっている。
県の図書館に蔵書されており、
持ち出し不可となっている。
調べものをしていると鳥の声が聞こえる。
先月よりやや早くなった
朝日が窓から差し込んでいた。
【をち池】
それらしい地名は調べても見つからない。
溜め池は無数にあるが類似した名前はない。
【図書館へ行く】
(PLが迷うようであればアイデアロール等で
民俗史に何か手がかりがあると気づいて良い)
阿品町郷土民俗史の閲覧が可能である。
有志が取りまとめた
郷土史に関する冊子のようだ。
丁寧に紐で綴じられているが
古びて染みだらけである。
またプレイヤーは図書館で出会った場合、
互いの手の異変に気付いて良い。
昭和13年、都井康男(34)狂死せり
1月20日、かねてより自宅土蔵にて
軟禁していた児童を殺害、
変若池に落とし遺棄する。
収容された遺体は15体であるが、
悪天候に見舞われ回収できなかったもの、
既に白骨化している遺体もあり
正確な被害者数は諸説ある。
遺体は成人男性の着物を
着せられているものもあったという。
犯行のちに自身の爪にて腹部を裂き
臓腑を広げ池の北部方面に存在する社の
神木二本へ渡しかけ力尽きたものと見られる。
死因は大量の出血によるものか
四肢が凍りつき壊死していたことから
凍死であると考えられる。
社まではおびただしい量の血と
都井と複数の子供の足跡が
雪の上に残されていたとされる。
また、都井宅近隣の住人が
同時期に多数失踪していたことが
後に確認された。
資料には手書きの地図も添えられており、
【ナビゲート】もしくは【EDU*3】で
現在の地図と照らし合わせることができる。
地図には名前のない池があり、
社は確認できない
【歴史】もしくは【知識1/2】
「変若(をち)」が「変若水(をちみず)」を
指しているのではと気づく。
「変若水」とは万葉集にも記述がある
若返りの効果をもたらす霊薬を指す。
【図書館】
阿品町では奇怪な失踪事件が
数年単位で発生していることがわかる。
また、都井までの変死体はないものの、
この変若池では9月に凍死体が発見されたり
子供の歯形がついた
首なし死体が発見されたりと奇妙な事件が
起こっていることが確認できる。
【幸運】もしくは【オカルト】
「あかがね様」という民話を見つける
内容は
昔小さな村で飢饉が起こった。
皆食べ物を各々隠し、
盗まれないように用心していた。
しかしあるとき庄屋の家から
おわん一杯のあずきが盗まれた。
庄屋が村中を聞いて回ると
ある貧乏人の娘が
あかいまんま食べたと歌っていたと
幾人かの村人に教えられた。
庄屋は怒り狂って
その子の腹を裂いて腹の中の
あずき飯を食べようとした。
ところが腹のなかには
噛み砕かれた石のかけらと
小さな赤いカエルが三匹。
赤い飯はあずき飯ではなく
赤いカエルであったことを悟った庄屋は
山の池に石に縛り付けた女の子を沈めた。
それから毎晩屋根が落ちるほどの雪が降り、
ますます村は貧しくなった。
それを聞いた隣村の神主さんが哀れに思って
女の子をあかがね様と呼び
池の北に社を建ててやると
みるみる村は豊作に満ちた。
今でもあかがね様は自らを沈めた石を抱いて
社で村人を見守っているのだと
伝えられている。
【アイデア】
あかがね様が祀られている場所が
夢に見た社であることを直感する。
また、御神体として
石が祀られているのではと思う。
ここまで調べると日は落ち、閉館時間となる。
(どうしても情報が出ないようであれば
司書さんを呼ぶなりして手伝ってもらう。)
その夜も同じように夢を見るが、
昨夜と違って赤い着物の幼女が
石を抱いてこちらを睨み付けている。
「あと、ひとばん」
両腕にまとわりついた子供たちが
無表情であなたを見つめる。
【ナビゲートで池に行く】
スマホの電波も届かない山のなかに
その池はあった。
呑み込まれそうに暗い水面は
生臭い臭気を放っている。
【ナビゲート】【知識】【アイデア】
時計と太陽の位置から北への道がわかる。
元々砂利道であっただろうその坂は
夢で登ったあの道と重なった。
【社】
夢で見た朽ち果てた社だ。
鳥居にはさすがに臓物ではないだろうが
干からびた何かが下がっている。
【目星】
探し物はすぐに見つかった。
崩れた社の奥の箱。
腕に抱えるほどの石が置いてある。
かつて巻かれていただろう
白い垂れ布(四手)は
朽ち果てた箱の残骸と共に落ちていた。
【石に触れる】
じめじめとした空気が
凍りつくような殺気に包まれる。
鳥居の中央に赤い着物を着た女の子が
血を流すほど口を噛みしめ
こちらをねめつけている。
【女の子に近づく】
四肢が麻痺していくような感覚を覚える。
両手を見ればどす黒い指の先が
ぼろぼろと崩れはじめていた。
また、手首ほどまでだった痣が
腕まで広がっていることがわかる。
女の子に近づけばこの両腕は
腐り落ちるだろうと直感できる。
(それでも近づくなら1歩毎にHP2削っていく。
女の子の位置までは30歩ほど。)
【石を壊す】
甲高い悲鳴が背後で聞こえた。
赤い着物の幼女が髪を振り乱し
恐ろしい形相でこちらを見つめている。
「ころしてやる」
「ころしてやる」
「おまえたちをのろうぞ」
「いつかかならず腹を裂いてころしてやる」
幼女は血の涙を流しながら叫ぶと
黒い霧を残して消えていった。
手の痣は薄くなっているが確かに残っている。
幼女の声が脳内に刻み込まれている。
この記憶が消えることがあるのだろうか。
この呪われた日々は終わったのだろうか。
なんとなく薄気味悪さを覚えながら
帰途についたあなたがたの後ろで、
子供が嗤う声がした。
ノーマルエンド
「残穢」
自我を失った子供たちの幻影は何を求め
さ迷うこととなるのか。
AF:映さずの水鏡(汚染された変若水の池)
サプリ2015変若水より
呑まれて死ねば子供の幻影となり
やがて自我を失って漂い続ける
終了条件
あかがね様の社にて御神体を破壊する
バッドエンド(タイムオーバー時)
三日目の夜は不思議なほど早く訪れた。
おびただしい人数の子供に囲まれて
あなた方は鳥居から坂を降りていく。
着いた先は暗い水面を湛えた池であった。
臭気があなた方の恐怖を駆り立てていく。
震える足は池へ踏み入れられ、
そうして水面がひざ、はら、むね、
口元まで迫ってくる。
生ぬるい水のなか、
あなた方の意識は途絶えた。
「呑み込まれる」
トゥルーエンド(石を壊し、沼を破壊した場合)
腕の痣は数日のうちに完全に消えた。
嫌な夢ももう見ない。
かつての日常が戻ってきたように思える。
だが、それは本当に保証された
安寧なのだろうか。
いつかまた、あのような
不可解な事件に巻き込まれるのでは
ないだろうか。
その懸念はあなた方の思考に
少しの不穏な染みを残していった。
「日常」
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解説
民話は残された人々の主観により
書かれている。
社で祀られているあかがね様は
未だ祟りを為す存在。
大人は無垢な子供に、
そして子供は自らの眷属として自我を奪う。
抵抗するものは惨たらしく殺し
見せしめとする。
本体は池の底で朽ち果て穢れとなり、
唯一残された戒めの石を依り代としている。
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キーパリングのコツ
時間制限がかなりシビアなので
基本的にノーマルエンドを目指すように。
石を祀り直すか壊すかで
意見が別れている場合は
「社は神社ではなく、
祀られているものも良いものとは限らない」
「失踪事件や怪死は都井の変死以前にも
起こっている(近年始まったものではない)」
「民話は当時の人の手で書かれているため
都合の良いように
解釈されている可能性がある」
ことを伝えても良い。
また、進行が滞った場合は15分に1回程度
幸運ロールを促し
痣が濃くなりHPを1削る等の
進行処理を行っても良い。
石を壊した後であれば
時間制限はなくなるので
その後に池を埋め立てる等の宣言があれば
トゥルーエンドに分岐すること。