『天国への登り方』を観てきました(23/3/25)
2023年3月25日(土)18:00の回
初演、4年前に初めて観た時からグサッと刺さって、DVDも買って、今まで何度か見返すほど大切で大好きな作品なので、再演の情報を見た時めちゃくちゃ嬉しかったです。
……の割に最近仕事も忙しく、身体も心もクタクタ、スケジュールの調整して楽しいことに思いを馳せる気力もない、という半分死んだような状態だったので観に行けないな…と半ば思っていたのですが、たまたま休みになって、たまたま公演が追加されて、たまたま気力が少し回復していたので、この公演を観劇することができました。
演劇はその時限りのもの、自分で足を運ばないと観劇できない、わかってはいるものの自分の気力だけの問題でなく本当に、こういう小さな「たまたま」がいくつも重なったことで、私がまた劇場で『天国への登り方』を観劇することができたのは何かの縁だと思いました。
私は隙あらば自分語りをするのでつべこべ言わずに感想いきます。
以下ネタバレありの感想
実は初演の時も感想を書いたのですが、その時の文章が出てきました。
せっかくなのでその時の感想も載せます。
(買った台本、大学の同期に借りパクされたままなんだよなぁ……)
演劇の始まりから好きで、初演の時は年始でしたよね?だったので最初の挨拶が「年始から縁起でもねぇタイトルの〜…」と始まったのが今回は「年度の始めから(あれ?違ったかしら…もう忘れてる)縁起でもねぇ〜…」になってて、前回を知っているのでその時点で謎の感動。
物語の始まり、妻がいなくなった経緯を説明する兵藤健人の「ワクワク」の時の動きを楽しみにしてたら見事なペッパーミルでにっこり。
2019年に私が観た時は「パンケーキ食べたい」のアレでした。
(やっぱり“流行りの動き”ってのがあるんだなぁ)
兵藤のりさの呼び方が「(常に)りさぴょん」から「りさ(たまにりさぴょん)」に変わってたのちょっと寂しいな、と思っちゃいました笑
だけど多分その呼び方は、2人だけの特別なあだ名というか、2人で過ごしてきた中で生まれた愛称なんだからそりゃ無闇やたらに呼ばないよな?と納得しました。
沼田星麻さん演じる兵藤健人は、前回も沼田さんが演じられていたと思うのだけれど、完全に別人で驚きました。セリフの一部が違うとはいえ、前回の兵藤健人とは完全に別の人なのです。兵藤健人ver.2とかそういうレベルではなく、同姓同名の兵藤健人さん、って感じ(?)
2019年の兵藤は、「ふにゃ〜ん」というかなんというか、ちょっと気弱なというか、自分自身の世界観がしっかりしている(浮世離れ?)というか、そういう印象の人物だったのですが、
2023年の兵藤健人は舞台上のキャラクターというよりは日常に近い、地に足をつけた印象に変わっていました。リアクションとか声の出し方とかがリアルで、私の身近にいる人と似ていてなんだか不思議な気持ちになりました。
兵藤の回想シーン、初演の時から綺麗で大好きなシーンです。
今回はライトの演出で兵藤と一緒に「目が“うわ〜〜〜!”ってなる感じ」を経験しました笑
初演時のこのシーンのりさは既に言葉が辿々しくて、初めて観た時に
「あれ、なんか…?不思議な喋り方…?」と思ったのをよく覚えてます。
再演版ではこの時点で普通(に聞こえる)に話していたことで、後半のもうほとんど言葉が出てこなくなってしまったりさのツラさが際立ちより苦しくなりました。
お喋り好きだったんだな〜とか、兵藤とりさは本当に仲が良かったんだな〜とか、2人の今までを想像してしまって……
純に促されて別れの前のハグをするところも大好きで、そのままするっと兵藤の腕から抜けて、ひらひらといなくなってしまうりさの儚さが印象的で…やっぱり大好きなシーンです。
兵藤にとっては本当に、いつもと変わらない朝だったんだなぁ……
今回のキャスティングで1番驚いたルナール!
相葉るかさんは初演時は蜂ヶ谷役でしたよね?!
初代ルナールも大好きですが相葉るかさん版ルナールも素敵でした。
ルナールとカオルの出会いのシーンも印象的で、
キャスティングが変わったからこその
攻めたルナール(?)が見られて感激しました。
私は初演時の、蜂ヶ谷の生前葬の時のルナールとカオルのやりとりが
ものすごく好きなので(「不謹慎を背負う」のところ)、再演版は一体どうなっちゃうの〜?!と楽しみにしていました。
記憶が正しければ初演版と同じセリフもあれば違うセリフやカットになったものがありましたがもはやそれが舞台の醍醐味というか。
勝手な想像ですが、何度もお稽古と試行錯誤を重ねて、それぞれのキャラクターのそれまでの人生を作りあげた上で目の前にいる相手のキャラクターと向き合うことで出てくる言葉も変わってくるんじゃないかな……みたいな、素人の憶測です。
サロンのシーンは相変わらず白熱というか、観ている側の消費カロリーも高い場面でした。
初演版の蜂ヶ谷はカラッとした印象で、
「怖いもんは怖いけどそういうもんさ、アッハッハ!」みたいな(?)イメージでしたが再演版の蜂ヶ谷はもっとしっとりした印象でした。
より人間らしいというか(キツネですが…)、複雑な気持ちを持っているように感じて親近感がありました。
そうだよなぁ…どちらか100%はなかなか難しいよな…頑張るのやめたい、でも怖い、でももう疲れた…は誰でも思うよな……
最後の群舞も好きポイントの1つです。
初演版の、りさが1人離れたところで見ていたり逆に1人踊っていたりの
構成?演出?が物凄く好きだったのですが、再演版ではどちらかというと
生きている人たちに焦点があっていた印象でそれはそれでとても
暖かい気持ちになりました。
おわりに
最後にめ〜〜〜ちゃくちゃ個人的な話ですが、最近祖父が亡くなりました。
病気の治療中ではありましたが入院はしておらず、元気に歩き回っていました。
自宅で「眠い眠い」と祖母に告げ眠っていて、祖母が気づいた時には既に意識がなかったようでそのまま病院へ搬送され入院、その数日後に亡くなりました。
病院へ着いた時点で「もう意識が戻ることはない」と言われた上でICUへ運ばれて、本当に意識が戻ることなく亡くなったそうです。
薄情と思われるかもしれませんが、孫の私としてはそんな無理に生かさなくても…と思ってしまったというか、運ばれた時点で眠るように体の機能が少しずつ静かに停止していっていたのならそのまま、休ませてあげればいいんじゃないの…?と思ってしまっていましたが。
私は孫だからそんなことが思えるんだな、と思いました。どうだろ、わからないです。立場や環境、状況が変わってみたら、思いもしなかった気持ちになることだって全然あるんだろうな……
祖父のお葬式は、雨の中静かに行われました。
残された私たちも悲しんで泣くばかりでなく、生前の祖父のことを思いながら笑い合うような、素敵なお葬式だったと思います。
お葬式の最後に、祖父の棺の中にお花を入れたのですがとても華やかでした。
棺の中には祖母が事前に副葬品を入れていたのですが、
お洒落だった祖父のお気に入りのスカーフや帽子、コート、祖父がもらっていたたくさんの賞状、好きで吸っていたタバコなどなど…
祖父は祖母にたくさんのものを持たせてもらい天国へ行きました。
今回の舞台では生前葬のシーンもありましたが、
もし私が棺に入るなら、一緒に何を持っていくかな、、
初演当時は大学生で、確か絶賛鬱々と過ごしていたので、冒頭の過去の感想にもあるように
限りなく「死にたい人」に寄った視点で観ていました。
今回の再演でまず驚いたのが、自分の視点が変わっていたこと。
「死にたい人」だった私が「残される人」として作品を観ていました。
4年の間に私もちゃんと4年分の年をとっていたようです。