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タスクシフトシェアの実現には高度なマネジメント能力が必要
医師の働き方改革に伴う法令改正によって、いくつかの医療専門職の行うことができる行為の範囲が広がりました。
一連の流れは「タスクシフト・シェア」と呼ばれており、自分たちの業務をだれかにシフト、シェアしたり、他職種の業務を自分たちにシフト、シェアすることで偏在している業務を平準化していこう、という流れです。
法令による業務範囲拡大に対して、実際の技術習得ができるように、告示研修が行われており、国家資格のアップデートが行われているところです。
しかし、法令が改正され、研修を受ければ、その行為を行うことができる資格は付与されますが、実際に働いている病院でそれを行っていくのは、なかなかハードルが高いのではないでしょうか。
なぜなら、それには多くの壁を乗り越えるための高度なマネジメント技術が必要になってくるからです。
抵抗勢力がする側、される側にいる
変化していくことに、抵抗勢力はつきものです。
しかも、タスクシフトシェアは内外に変化をもたらします。
部署の内にも外にも、抵抗勢力が生まれていきます。
タスクが増える側(シェア、シフトされる側)は自分たちの業務が増えていくことに懸念を示し、抵抗勢力となります。
タスクが減る側(シェア、シフトする側)は自分たちの業務が減って、自分たちの存在意義や給与が消えることへの懸念を示し、抵抗勢力となります。
つまり、一番みんなが望んでいるのは、変化しないことなのです。ずっと変わらず、今の仕事を続けていられることを望むのが圧倒的多数派なのです。
この、自分の部署にも相手の部署も抵抗勢力が生まれてくる状況で、業務をやりくりして進めていくといのは非常に高度なマネジメントが必要です。
業務の確立というパイオニアが行ってきたことが必要
告示研修を受ければ、資格が付与されるので明日からでもその行為を行うことは、法律上可能です。
でも、本当に突然、明日から、患者さんに対してその行為を安全安心を担保しながら実施することができるでしょうか。
本当の新人が、国家資格を取得してすぐに業務にひとりで携わることができないのと同じで、新たに資格に含まれたものも、現場での教育と技術の標準化(一般的に言う「見極め」)が必要なのではないでしょうか。
そうなってくると、これまでやってこなかった業務、あるいはやってはいけなかった業務を急に確立することは至難の業です。
これまで、我々の資格の業務を切り開いてきたパイオニアとしての能力が求められるからです。
教育するにしても、その業務をやったことのある上司や先輩がいなければ、部署の外に教育を求めることになるでしょう。
病院としてその業務を認めてもらうために、ルール変更が必要となり、病院経営層の会議体を動かす必要もあるかもしれません。
計画を立て、部署外と交渉を実施ながら進めていくという実行力が問われます。
目的志向が必要
いずれにしろ、タスクシフトシェアは何のために必要なのでしょうか。
患者さんのためです。
「資格が生き残るため」とか「業務を奪われないようにするため」というすこしズレた議論がなされています。
医療制度が崩壊せず、安心安全に医療を受けられるようにしておくことは、患者さんのためです。
目的がズレていると、打つ手も曲がります。
手段の目的化は誰も幸せにしません。
自分たちだけが良ければいい、という考えでタスクシフトシェアを進めることはできません。
タスクシフトシェアをする側もされる側も、前述のように、「忙しいから自分たちの業務は増やしたくないけど、自分たちの業務が減って存在意義がなくなるのは嫌」という正義があるのです。
そんな矛盾した思いから、変化をしたくないという根本的な欲求がそれぞれにあります。
こんな状態では、患者さんのための医療などできません。
それぞれの部署が、それぞれ患者さんのために何ができるのか、全体(病院として、医療業界として)が良くなる方向を目指すことを目的として、手段であるタスクシフトシェアを進めるべきだと思います。
自分たちの業務の目的は、一体何なのか。
これからの変化の目的は、何なのか。
それを考え続けなければならないので、タスクシフトシェアの難易度は高いと思います。
でも、今の医療業界は待ったなしです。
上記の壁を乗り越えられるように、自身の持ち場でマネジメントの能力を粛々と磨いていきます。