わたしはムタになりたい
ムタ。
ガリガリに痩せて
ぼろぼろでやってきた。
鼻の上には石ころサイズの大きなイボ。
皮膚は爛れて痒そうで、
身体中に虫だらけ。
振り絞る”ニャー…”が助けてに聞こえたあの日。
庭に傘刺し、布団をつくり
香箱座りで休むムタ。
来る日もくる日もそこにいる。
懐かしいな5年前。
今じゃ立派な神様猫。
たまに強欲腹ペコ王子。
近所じゃムタ神様と呼ばれて
子供はみんな
「猫じゃなくてムタになる!」
とムタをギューッと抱きしめる。
来た時から歯は4本。
今はたったの1本だけ。
自然界は厳しいね。ムタを見ればすぐわかる。
その視線の高さで、
その柔軟さで、
その鈍臭さで、
その優しさで、
どんな世界を見てきたの?
ムタに触れて、集中して
ムタの全てを感じとる。
わたしの頬を流れる涙。
「どんな姿でも愛されるムタに私もなりたいな」