3年ぶりの音楽フェスで泣くしかなかった
バイバイと手を振る子供を預けて向かった先は仙台。3年ぶりに開催された荒吐(あらばき)ロックフェスへ旦那と行くからだ。
私はライブが少し苦手だった。真っ暗な会場で強烈な照明が光り、音が流れた瞬間、他人同士がぎゅうぎゅうに密接して、叫んで、体を揺らして、本能が飛び出すあの感じに毎回ビクッとしてしまい、それに順応しないと「ノリが悪い」と迷惑をかけると思い、よくわからんまま全力でその場に相応しい人を演じた。が、疲れちゃって自分には合わなかった。
しかし屋外フェスに初めて参加してからは話が違う。
自然の見える場所で、自分が行きたい会場へ向かいながら、美味しいグルメや景色を楽しみ、音楽に合わせて体を揺らして、手を上げて、たまにシャウト(コロナ禍は禁止)。「アーティストのために盛り上がらないと!」という勝手に考えた義務から解放され、自分が素直に音楽を楽しめる場所になった。ライブが好きになった、それは多分フェスが合っていたから。
が、コロナも妊娠も出産もあって2019年以来参加していなかった。
今回3年ぶりに開催される荒吐ロックフェスも、子供がいるしと躊躇していたが、旦那が「思い切って行ってみよ」ということで参加。元々子供も連れていく予定だったけど、安全性を考えてギリギリで預けた。(義両親に感謝)
で2022年5月1日最終日の荒吐ロックフェスへ。
あいにくの雨だった。防水シューズ、スポーツウェア、あったかい格好、カッパを備えて行ったが到着して4時間後には防水シューズはあっけなく陥落。雨が長期化するに連れて地面のぬかるみがひどくなり、しっかり濡れてしまったのだ。応急処置として、ビニール袋を靴下の上から履いて、これ以上濡れないようにと調整。気温は8度。キンキンに冷えたビールやハイボールではなく、いいちこのゆず割り(HOT)と日本酒の熱燗をガソリンにして寒さを誤魔化し必死に歩き回る。
「カッパて便利だな、両手も空くし、これは画期的」
と100年以上前から知られているカッパの利便性に改めて感動しつつ、楽しみにしていたアーティストの音楽を聞き、熱々ラーメンを食べ、何度も泥にハマりながら夜になった。
いつもは最後までいるが、今回は……帰りたかった。
楽しむ以上に、どうしても「乗り越える」というミッションが強くなり、冷えた手足に限界が見えた。
最後に登場するサンボマスターを楽しみにしていたけど、どうするか悩んでいた。が、やっぱり少し聞いていこうと思ってバス乗り場から引き返し、ライブへ。
「3年ぶりの荒吐だぞぉおおおお」
「この3年間でいろいろ合っただろが、俺たちはいつもお前たちのことを考えていたぞー」
「ここにいるみんなで優勝するぞー!」
みたいな語りと共に音楽が始まり、体に音楽と歌声がドゥンドゥンっと沈んでいく。音楽を浴びながら、熱いメッセージを浴びながら、「この3年間、どう過ごしたか」をテーマに、走馬灯のように3年を振り返っていたら……ぐしゃっと泣けてきた。
思った以上にこの3年は濃かったんだなぁ。音楽を聞きながら、頭の中にいろんな思考が巡り、いろんなことを思い出した。そして、またここに帰ってくるために頑張ろうと誓った。。気がつけば、濡れて沈んでいた体が動いていた。周りも雨を感じさせない手や足の動きでライブを楽しんでいた。雨を越えた瞬間かもしれない、これがミラクルかもしれない、これが直接会えるライブなのかもしれない。
雨に濡れてグチャビシャになったけど、それもまた良い思い出になるんだなぁと帰りの温かい新幹線でキンキンに冷えたビールと牛タンジャーキーを食べながら思ったのでした。また帰ってこないと、ここに。