拝復、無才能児童
「夢は諦めないで頑張ろう!」
人は、時にそう簡単にこの言葉を口にする。
数々の本や歌詞、台本でもこの言葉を見かけた。
それゆえに、この言葉の希少価値が薄れていることを、私は感じていた。
自分は幼い頃から、目立つのが好きだった。
いい意味でも悪い意味でも、学校や周りで自分を知らない人はほぼいなかった。
そしてそれは、沢山の目を惹きつける職業への憧れとなった。
初めて受けたオーディションがいつだったかも、忘れるくらい夢中でオーディションを受けた。
ありがたいことに、10歳くらいの時、お仕事をいただく機会があった。
オーディションで勝ち上がったというよりかは、単発で頂いたお仕事から、系列番組のMCをやらせてもらった。
結局中学を卒業するまで、オーディションを沢山受け続けたが、ちゃんと名前が出るお仕事はそれ一つだった。
中学2年生の自分は、薄々自分の限界を感じていた。
他の子役の子がテレビに出る現状。
自分はただ学力も低下して、とても優等生とは言えない行動もたくさんした。
圧倒的に、才能がなかった。
自分ではわからないけど、芸能人になるための「何か」が欠如している。
気づいた時、オーディションのために6年間切らなかった髪の毛をバッサリボブにした。
そして私は芸能界への諦めを決め、進学校への受験を決め、普通の恋愛をし、普通の学生生活を送った。
大学3年生で、コロナウイルスが蔓延した。
自分は元来から、大学生のうちしか自分の好きなことができないと思っていた。特に、就活もなく学業もそれなりに余裕が出る大学3年生は、色々チャレンジするのに適していると考えた。
私は、大学2年の文化祭でアイドルのコピーとして生歌&ダンスパフォーマンスをした。
当日になってマイクの不備が見つかって、散々の結果だった。
仕事じゃないと、アイドルってできないんだなあ。
なら、大学3年生で最後にチャレンジしよう。
そう思って応募した。
いろんなことがあってすぐに脱退してしまったけど、
そこから不思議な縁でお仕事を頂くようになった。
エイトのイメージガールにもならせていただいた。
結果的に、寄り道はしたものの思い描いた夢に少しだけ近づいているのである。
あくまで自論だが、芸能界いわゆる女優やモデルとなれる女性(ここでのジェンダーに関する批判はしないでください。自論なので)は、少なくとも10代の頃に芽が開いている。
それは、旧芸能界の一つのタイプとして、若くて綺麗な女性が活躍するという場所だからである。
そのため、一度その「旬」に芽が出ていなかった自分は、2021年の今でも才能自体は無いと考えている。
だからこそ、トークライブの前には入念なネタチェックをするし、日頃からあらゆるところにアンテナを張って情報を吸収するように心がけている。
「夢は諦めないで頑張ろう」
これは、小学5年生で唯一頂いたレギュラー番組で、まさに10歳の自分が言っていたセリフだった。
奇しくも今晩、その録画を見た。
なぜか、涙が出てきた。
何も知らない子供の無垢さにか、夢を追うことから逃げた自分にか、
お仕事を頂けている今のありがたさにか。
いろんな想いの涙が、粒となった。
人々は、簡単にこの言葉を口にするから私はこの言葉が嫌いだった。
だけど、22歳の私は、明日からの毎日への活力を、たかが10歳の子供がセリフで喋っている言葉から貰ったのであった。
もし、ここまで読んだ人に、何か自分が送れるメッセージがあるとしたら、多分これだろう。
「Never give up! 夢は諦めないで頑張ろう!」
Sincerely yours,