世界
歓喜の渦の中で、ひとつだけどうしても書いておかなくてはならない出来事がありました。
最近私は、エイト系列のお店でアルバイトのような形でお仕事をいただいています。
ホールスタッフとして、周りの人に支えられながら何とかやっているつもりです。
夕暮れの中、ひと組のお客様がいらっしゃいました。
男性の手を取りながら女性は、私に問いかけました。
「今日のテイクアウトは、何があります?」
一通り説明を終えると、
「もう少し他のお寿司を教えてください」
と仰りました。
「わかりました。白身魚系、マグロ系、貝などありますが…」
こんな件を経て、追加のお寿司も頼んでくださりました。
ホールの上司の方がお会計を済ませている間に、テイクアウトの準備をしました。
「お待たせしました、よければ近くまでご一緒させてください」
そう言って私は彼女の手を取り、一段一段、声をかけながら段差を降りた。どうやら彼女は、信号を渡った先あたりまでで良いらしい。
「すみません、まだ昨日来たばかりで不慣れなことばかりなのです」
「そうなんですか?全く感じませんでしたよ、むしろとてもお気遣いいただいて」
自然と会話は弾んだ。
「へぇ、お姉さんはイメージガールなんですね。中華料理のような明るい感じ、何だかわかる気がします」
そんなに明るい感じ、私のどこから出てたかな。声色かな?
「まだ大学生なんですね。大人っぽいですねとても」
最近意外と自分の年齢より上に見られることが多いが、見た目が以外に私のどこがそうさせているのだろうか。
「ありがとうございます、あの、テイクアウトの電話番号教えていただけますか?今度またお願いしたいんです」
私はポケットからスマートフォンを取り出して、店の番号を読み上げた。
彼女はガラケーに耳を当て、打ち終わると「ありがとうございます、また来ますね」と口にした。
そして彼女は右手の杖を動かして、坂道を降っていった。
高校一年生からなんだかんだでいろんなアルバイトをしてきた。ある時はファッションビルの店員、ある時は居酒屋。
ただ、この世には私の知らないことがまだまだあった。今回の経験も、私にとっては初めてのことだった。
「かわいそうだから」という気持ちで動いているということではない、と言い切りたい。しかし、やはりどこかでそのような気持ちも持ってしまっていると思う。
人に見えている世界は、本当に人それぞれである。
だからこそ、人が怖いとも思う。でもだからこそ、人の世界を彩り豊かにしたいとも思う。
何が正解だとか、そんなことはないのだと思うのだけれど、いつでも人のために思慮深くなれる人間になりたい。今日は強くそれを感じた。
目に見えるものでもなくても、誰かの力になれたらいいよね。
なんなら、私たちが目で見ているものなんて本当にちっぽけなものでしかない気がする。
とりあえず彼女が私のことを、有村架純ちゃんだと思ってくれていたらうれしい。
いい夜をお過ごしください。
Sincerely yours,