野球と少女のちょっといい話
時は2004年、当時5歳。
私はこの年、二つボールをいただきました。
B ●●○
いや、そういうことではないですよ笑
あの少し重くて、バットの跡が付いているあの球体です。
今日はその話をしたいと思います。
私の家族は丸ごとドラゴンズファンであり、近距離遠征厨なので、毎年マリーンズ&ライオンズの交流戦を見に行っていました。
5歳の時も応援に行き、その時にドラゴンズのコーチ陣の方からぽーんとボールを投げて頂いたのです。
そして、もう一つのボールは海を超えた地でのことでした。
家族旅行で向かったアメリカで、偶然イチローさんが宿泊先の近くの球場に来ると。
慌ててチケットを手配し、ボールパークに向かったのです。
小さい手に余るチケットを握りしめて、日本以外の球場に緊張しながら入場しました。
すると、トコトコと恰幅のいいおじさまがこちらに歩いてきたのです。
何だろう。私の方に視線をすごく感じる。
「Hello?」
おじさん、話しかけてきたわ。
なんだろう。
「Is it your first time here?」
たしか、こんな感じ。
「Yes, I am」
中学校のテキストみたいな返答をこなすと、おじさんはポケットの中からあるものを取り出し、
そして、こう放ったのです。
「Present for you」
まだ手の肉が落ちきっていない小さな手に、
茶色くて、ゴツゴツしてて、重たい一つのボール。
ボールは、お世辞にも綺麗だとは言えません。
見た目は。
でも、そのバット跡の黒い線も、土がついて茶色くなった色も、糸の乱れも全てが私にとっては宝石以上の輝きに見えました。
一概に野球が好き、と言っても色々あります。
技術面を研究するのが好き、ゲームが駆り立ててくれる刺激が好き、その他たくさんあります。
ただ、私はやっぱり応援することが好きなのです。
選手の皆さんが見せてくれる感動のシーン、こういった野球を通した人との関わりが、「好き」に昇華していったのです。
2007年、アジアシリーズ決勝戦。
私は現地にいました。
そして初めて、メモリアルな勝利を目にしました。
当時はコロナもないので、点が入れば「バンザーイバンザーイバンザーイ」の後にプラバットを前後左右の人と打ち合う、そんな風習がありました。
私はこれ好きです。
そして、チャンピオンに輝き、紙テープを投げることに。
小学2年生、あん少女はもちろんプロレスラーのように紙テープを投げることはできません。
そのまま目の前のおじさまの後頭部に直撃。
コントロール、F。
隣でドラゴンズブルーに顔色を変えた両親。
慌てて「ごめんなさい!」と3人で頭を下げました。
するとそのおじさんは、私の方を向いてこう言いました。
「大丈夫だよ、そのかわりお嬢ちゃんが大人になってもドラゴンズのことをずっと大好きでいてね」
おじさん、私は22歳間近になってもちゃんと大好きでいますよ。
そしてずっと、愛し続ける予定ですよ。
こんな関わりは、今の世の中じゃありえない。
突然直接ボールを渡されるだとか、消毒しなきゃってなりますからね。
でも平和な世の中がまた来たら、
みんなが楽しい思い出を重ねて欲しいと思っています。
こういう野球の楽しみ方は、いかがでしょうか。