夢の乗り物

実家で暮らしてた頃の最寄り駅は
ラッシュ時でも1時間に3本しか来ない
子供頃は1時間に1本しか来なかった
そんな田舎の駅だった

ダイヤが乱れだしたら乱れっぱなし
単線だから仕方がない
無理な横断があって遅れたり
霧が濃いと遅れたり
多少の遅れは想定内
それくらいじゃ、皆、動じない
仕方がない、そういう路線だから

去年の今頃、実家に帰ろうと
駅で電車を待ってると
酔っ払いのオジサンが一人叫んでた
『馬鹿にするな!馬鹿にするな!
都と都を結ぶ電車を馬鹿にするな!
単線やからと馬鹿にするな!
平安京と平城京を結んでるんや
千年の時が繋がってるんや!』

馬鹿にはしてないけど
冴えない路線とは思っていたから
ちょっと見透かされた気がした

酔っ払いのオジサンは途中から
ホームの椅子にへたり込み
寝かけたのか声が小さくなって
何を話しているのか聞こえにくくなったけど
『都を繋ぐ夢の乗り物、、』とか
『千年の都、、』とか呟いて
聞いてるうちに冴えないと思っていたものが
ワクワクする乗り物に変わった気がした

もう一つの都、訪れてみたいな
鹿にお煎餅をあげたいな
もちろん大仏さまにもお会いして
出来たてのピーナッツバターも買いたいな
お蕎麦もいいね
ヨモギ餅も食べたいし
千手観音さまにもお会いして
今年は出来なかったけど
桜の季節には、あの電車に乗って
もうひとつの都を訪れてみたいな

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