地方都市在住のサラリーマンの場合
僕はとある地方都市に住んでいる30代のサラリーマン、結婚はしていないし、恋人もいない、
親は早く結婚しろとうるさくなってきた、職場と家の往復だけなので、当然出会いもなく、仕事をこなすだけの毎日を送っている、
出会いがあればいいなと軽い気持ちで出会い系サイトに登録したのは、一年前のことだった、
そのサイトでは、女性にメール等を送信するとお金がかかるという仕組みになってる、何通か気になった女性に送ってみたがスルーされ、受信メールがきたと思ってもサクラだったなんてこともあった、
そんなに簡単には出会えないなと思っていたら、日記機能というものがあり、日記を書いたりコメントをしたりするのは無料らしい、
僕は少しでも印象をよくしようと、絵文字を使った日記を書いてみたが、女性からの反応はない、
だったら、こちらからコメントしてやろうと思い立ち、日記を読んでいった、
その中で、一際目をひく日記を見つけた、
その方は女性で、自分が日頃思っていることを中心に様々なことを日記に書いていた、
日記を始めて読んだとき、文章の表現、そして彼女の着眼点に感心した、そこからフォロワーになり、彼女の日記を読んでいった、どうコメントしたらいいかわからなくて、ずっと足跡といいねボタンを押しているだけになった、
日記を読んでわかったことは、ハイパーオメコという単語で何時間か笑えること、火の鳥のこと、火葬場の写真が好きなこと、猫や犬が好きなこと、家庭のこと、なんだか、素直に書いているようで本質がつかめない人だった、
彼女は今フリーターでそれを悲観している、人生に溺れているから、痛々しくて生々しい日記を書いているのだ、それでしか現在の彼女は社会と繋がれないのだと日記を読んでいて感じた、
僕は彼女の日記が更新される度に読み、いいねを入れる、それが生活の一部となっていった、
なぜ、彼女の日記を読んでしまうんだろうか、
僕も彼女に共感する部分があるのだろうか、
しかし、1つだけ気がかりなことがある、
彼女は出会い系サイトでの日記に依存しているのではということだ、
僕はずっとあしあとといいねでしか、彼女と関わりがない、そんな僕が心を鬼にして、精神的に不安定な彼女に「いつも何度も同じ事を書くんじゃねぇよ、このかまってちゃんがよ、どうせあれだろ、マイナス思考なことを書くのは誰かに違うよとか言って欲しいんだろう??そんなに世の中の甘くないんだぞ!」と書いたら真面目に色々なことと向き合ってくれるかもしれない、
ここの日記がモラトリアムの終焉を迎えるひとつの過程なのだろうかとも考えた、キタキツネも親に手を噛まれて、無理矢理親離れさせたりするし、そろそろ彼女に厳しいことをコメントに書いてみた方がいいのかもしれない、
出会ったりしていないみたいだし、彼女がなぜこの出会い系にいるのかが分からない、
僕の変な正義感から、ついに彼女の日記にコメントした、
「いつも日記を読んでいます、あなたは気持ちの浮き沈みが激しいと感じています、落ち込んでコメントしてくれた人たちに励まされ、立ち上がってを繰り返している、もっと前向きになれないんですか、何度も同じ事を繰り返して何が楽しいんですか、それにマイナスなことばかり書いて、読んでいるほうは気が滅入ります、フリーターになったのは自分の責任でしょ、ちゃんと働いている人を僻んだりしないでほしい、もっとそれにコメントを書いてくれる人に返信もしない、それってマナー違反ではないんですか、ちゃんと人のことを思いやってください!!それとね、セフレがうんぬんとか下品ですから、出会い系サイトでもそこはわかっていてください!」
一気に書き上げたコメントをながめながら、僕はきっとSなんだなと思った、
それから、彼女からメールもコメントの返信もなく、不気味なほど淡々と日記を書き続けていた、本当に不気味だ、
それでも、彼女の日記を読んでいる、
彼女も僕を一読者として受け入れている、
不思議で奇妙な関係性だ、
僕は、彼女は誰にも見せない自分をここで出しているのだと感じた、リアルではどんな人なんだろう、
会社にいても、合コンしていても、夜に彼女の日記を読む、
彼女は淡々と日記を書いていく、
そんな関係性が心地いいと思えた