【ももたろレビュー】映画#4『赤ひげ』
1)あらすじ
江戸時代。
西洋医学を学んだ若き医師・保本登(加山雄三)は幕命により小石川養生所に配置され、そこで所長である新出去定、通称赤ひげ(三船敏郎)と出会う。
当初は自らが希望した赴任先ではない貧しい診療所の環境に不満を抱く保本であったが、去定の患者に対する献身的な姿勢に次第に感銘を受けていく。
そして様々な患者との関わりを通じて保本は医療の本質と人間の尊厳について学んでいくのであった。
2)ももたろレビュー
説明不要な名監督、黒澤明の作品です。
モノクロ(白黒)作品で、時代劇。
もはや若い人達が目にする機会はないと言っていいでしょう。
でもこれだけは言いたい。『絶対に一度は観たほうがいい!』と。
加山雄三や三船敏郎といった出演陣が魅力的なのは当然として、何よりストーリーが素晴らしいのです。
物語は若き医師保元の視点で描かれます。
長崎留学を終えて当時最先端のオランダ医学を修めた彼はまさにエリート。
許嫁の待つ江戸に帰れば御目見医の地位が与えられ、何不自由ない生活を送ることが出来るはずでした。
ところが許嫁は留学中に他の男と恋仲になっており配属されたのは貧しい小石川の診療所。不貞腐れてしまうのも分からないではない(このときの不貞腐れ方が面白い)。
ここから様々な出会いを経て保元の心境がどの様に変化していくかが大きな見どころ。
どの患者とのエピソードも非常に印象深いのですが、中でも圧倒されるのが危篤状態の蒔絵師六助の臨終シーン。
去定から彼の臨終に立ち会うように言われた保元は、苦しみに耐えるその姿からつい目を逸らしてしまうのです。彼も視聴者もその悲惨な姿に同情を感じることでしょう。なんと辛くて苦しい姿なのだ!見ていられない!
ところが六助の死後。一度も見舞いに訪れたことがなかった彼の娘が診療所を訪れ、父親の壮絶な過去を語ります。
話を聞いたその瞬間。
最後まで苦しみに耐え抜いた臨終の顔がどれほど尊いものであったか、保元と視聴者は気が付くのです。
一瞬の間に180度印象が変化する。
これは凄まじい演出と言って過言ではありません。
一つ一つのエピソードがこのクオリティなものだから観ている方はもうたまりません。三船敏郎演じる去定のひたむきで時に優しい姿に感化され、保元と共に小石川診療所が離れがたい場所であると感じることでしょう。
物語を通して描かれる貧しい暮らしの中で生きる人々に向けた温かい人間愛の様は、いつの時代になっても不変に胸を打ちます。
3時間の長い映画ですが途中に休憩シーンを挟むので安心(昔は長い映画の途中で休憩が出来るシーンが挿入されていたのです)。
というか夢中で観ていると3時間なんてあっという間です。
白黒映画ということに躊躇せず、是非是非視聴してみることをお勧めいたします。
今日も良い一日を。