ロビンフッド物語 始まり
駅前のモニュメント前に10時集合の約束だった。九時も終わりそうな頃だというのに誰一人姿が見えない。
とはいっても、姿を知らない人間を待っているのだから、そこに居たとしても気付かないかもしれない。それでも、気付いてくれるだろう。という、短絡的な考えで始まったのがこのオフ会だ。
「10時回ったけど……誰一人来る気配ないな」
「いるでやんすよ」
「うわぁ」
シンボルに付いていた時計を見上げていると、背中端から声が聞こえた。彼はゲームでもリアルでも知り合いのイアソンだ。
少々間抜けな声を上げてしまったボクは、イアソンに怒鳴った。
「いきなり声をかけるなよ。びっくりするだろ」
「いやー、すまないでやんす。結構遠くから声を掛けていたんでやんすが……」
「え、ほんとに」
イアソンは頭を搔きながら誤った。ボクも頭を下げて謝った。
「誰もいないでやんすね。ホントにここでやんすかね」
「だよな。まぁ、もう少しだけ待ってみよう。迷ってるだけかもしれないし」
ボクは再び時計を見た。
その視界の中に、一人の女性が目に入った。
「あのー、もしかして」
彼女は恐る恐る声を出したが、何か聞きたい雰囲気だ。
「えっと、どうしました。なにかありました」
イアソンが声を掛ける。一般人に声を掛ける時はまともな雰囲気だ。
彼女は二人を交互に見て、そしてボクをジッと見て何かに気が付いた。
「もしかして、ロビンさんですか」
彼女はボクの名前を言った。
「えっと、どちら様ですか」
「わかりませんか」
ボクは彼女に聞いた。彼女はボクに聞いた。
お互いに疑問をぶつけている。イアソンが聞いた。
「どちら様」
「えっと、わたし、レイアです。主催者の」
彼女はレイア。ボクたちのクランにやってきた新規プレイヤーだ。今回のオフ会を考え、特にメンバーは集まらなかったが、彼女の言葉で欠航することになった。
多分、ボイコットする人間もいるだろうし。多分、集まってくる人間は二・三人くらいだろうと思っていた。
「どうします。三十分経ちましたけど」
「そうですね。行きましょうか」
レイアはそう言って歩き出した。ボクたちも、後をついて行くように歩き出した。
「どこか予約してるんでしたっけ」
「いえ、場所は決めてるんですけど」
イアソンはレイアに聞いた。主催者である彼女はどんな予定なのか分からない。
レイアは大体の目星を立てている。と言っていたが、ボクもイアソンもこの辺りは知らない。
彼女は、レイアは知っているのだろうか。
「ここなんですけど」
そのお店は
焼肉屋だった。
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