ロビンフッド物語 その2


「五人くらい予約は掛けたんですけど……」


 居酒屋のような焼き肉屋。

 店内の雰囲気は雑な居酒屋だ。小奇麗な雰囲気もなく、机なんか樽に丸いべニア板があるだけだ。


「こちらにどうぞ―」


 店員が席へ案内してくれた。奥の座敷で、掘りゴタツ式の机が良い雰囲気を出している。

 ボクとイアソンは奥の席に座った。正面にレイアが座った。


「写真の雰囲気で選んだんですけど、変な場所でよかったですね」

「そうですね」


 ボクはメニューを広げながら目を走らせた。

 ポップな手書きのメニューでとても読みやすい。が、


「オススメの……バカ盛りカルビ」


 そこにあったのは、大皿に山のように乗っかったカルビだ。だが、こういうのは見掛け倒しだと相場が決まっている。


「注文してみませんか」

「してみますか」


 レイアがキラキラとした目でボクとイアソンは顔を合わせ、注文してみることにした。

 そのほかに何種か注文して、飲み物を聞いた。


「私、お酒飲めないので……」

「じゃあ、全員ウーロン茶でいいですかね」


 ボクは安心した。お酒を飲む人、飲まない人。そのせいで発生する「お酒を飲まされる」ということがない。


「皆さんのまないんですねー」

「飲めることは飲めるんですが……」


 そう、ボクもイアソンもお酒は飲める。が、そこまで好きではない。

 飲めと言われれば飲むが、飲まなくてもいいのなら飲まないほうがいい。だからこそ、飲み会が嫌いだった。


「それにしても、どんなのが来るんでしょうね」

「まぁ、大したものじゃないですよ。あの写真も、見掛け倒しですよ」


 なんて笑っていた。

 そこからは他愛のない話をした。

 ゲームを始めたキッカケ。

 リーダーとの関係。

 ゲーム歴やアニメ、漫画など。


 たくさんの事を話した。そして、沢山の表情を見た。


「そろそろ来ますかねぇ」


 レイアは言った。

 そういえば最初に注文したバカ盛りカルビを見ていない。いや、もう来ているのだろうか。

 いや、そんなはずは——


「お待たせしました。バカ盛りカルビです」


 二人がかりで運んできたものは、写真そのままの大きな山のカルビだった。


「うそでしょ……」


 ボクは言葉を漏らした。信じていなかったからだ。

 イアソンの方を向いてみたが、心個々にあらずな状態だった。

 レイアは違った。キラキラと目を輝かせて、とても嬉しそうにしている。


「これ、食べきれるのか」

「大丈夫ですよ。ほら、焼きましょう」


 山を見ると登山家は燃えるという。

 きっと彼女も同じなのだろう。


 高い山ほど、彼女は燃えるのだ。


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