北へ...... 2
どうしてこうなったんだろう。
口より先に頭の中で考えた。
黒塗りの高級車なんて、人生で乗るわけないと思っていたからだ。
左ハンドルのウン千万が我が物顔で走るというのが、俺にはどうも合わなかった。
「そんなに不安?」
隣で寛ぐ女子高生。
肩まで伸びた黒髪のポニーテール。見た目は特に違和感のない女子高生なのだが、出会った場所的には完璧にアウト!!
てか、何者だ?
「あの、どこに向かったら?」
自然と敬語になる。
そりゃそうだ。
わけのわからない人。しかも、自分の命を握っているのだからなおさらだ。
「あのさぁ」
「はい。なんでしょう?」
「その敬語。やめてくれない?」
「えっ?」
彼女からの提案は、当たり前と言えば当たり前。
だが、大人の俺からすればそれは大変に難しい。
「でも......」
「でも、もだって、もない。てか、めっちゃ違和感あるし。なにも気にしなくて良いよ。ちゃんと指示に従ってくれたら......なにをしてもいいのよ?」
と、彼女は意味深な言葉を残し、シートを倒した。
「じゃあ、ひとつだけいいか?」
「うん。なに?」
路肩に車を止め、彼女に目を合わせてこう言った。
「車変えたいんだけど......」
「......は?」
「いや、コレめっちゃ目立つし。すごい神経使うし」
「あぁ、なるほど......」
納得したような彼女の顔。
「でも、アテはあるの?」
「知り合いの廃車屋が近いけど......」
すると、ため息をつきながら「好きにして」とだけを残し、眠ってしまった。
少し不機嫌な感じだったが、一体なんだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?