北へ...... 3
忘れたことがあった。
昔言われた事だ。
「人は信用するな。だけど、人を恨むな」と......
子供の頃に喧嘩をした。小さな喧嘩だ。
約束を守らなかったー。とか、そんな事を父親に相談したのだ。
その時言われたのがコレ。
今でもあまり意味がわかってない。
あの時の父親の顔は思い出すのに......
「寝れないの?」
助手席で眠っていた彼女。石上 優奈は目を閉じたまま声を掛けてきた。
「考え事をね。そっちも?」
「ううん。寝れないだけ」
そっと目を開け、俺を見る。やっぱり、なにを考えてるかわからない。
「思うんだけどさ」
「うん。何?」
黙っていようか悩んでいた。
でも、悩んでもしょうがない。進まないのだ。
「俺が捕まったのも、巻き込まれたのも、全部君のせいなんじゃないかなぁって思うんだ」
「だったら?」
「だったらって言われても、よくわからないんだ。恨んでない。って言ったら嘘になる。最初は訳分かんないからってめっちゃ気持ち的に八つ当たりしてたんだ」
ただただ静かに聞いている彼女。
どんな気持ちだろう。
「だからこそ、今は協力する。って言っても協力しない。なんて選択はないんだけどさ」
「良いよ。逃げたって」
「え——」
真っ直ぐに僕に向かう彼女の瞳には、うっすらと言葉を感じた。
「そんな事しないよ」
俺はヘタレだ。
とりあえず。みたいな言葉しかいえなかった。