北へ...... 16
「ん......」
朝日に起こされた。と、いうよりは違和感に起こされた。
狭い車内の中、隣で寝ているはずの優奈がいない。
「ん?」
慌てて体を起こす。荷物はそのままだった。
車内から飛び出して周りを見渡す。
海岸沿いの高い目標のしたに人影が見えた。
長い髪を風に遊ばせる姿。優奈だ。
「どうしたんだ?こんな所で」
あがる息を抑えながら声を掛ける。
海を見たままの優奈は、日の出の余韻を楽しむ様だった。
「映画のラストはね」
優奈は唐突に話し始めた。
「このまま、逃亡する二人が海で自殺するの。そして、男は助かってしまう。そんなはなしなの」
「そうなのか」
俺は素直に返す。
彼女の近くに行こうとする足が動かない。
「もしかしたら、彼女は自由になりたかったのかな?なんて、子供ながらに感じたの」
「へぇ......」
悪寒がする。やな予感がする。
早くそこから離れて欲しい。
それを吐けずに、ただただ相槌を打った。
「私も、きっと——」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?