北へ...... 4

走りながら考えること。
山道を走りながら、遠くに目をやった。

空は綺麗で、雲も綺麗な形をしていた。
不意に、息苦しさを感じた俺はちょっとだけ提案をした。

「展望台に行ってみないか?」

まぁ、逃走中の俺らが、どの面でこんな呑気な事を言っているのだろう。と思うだろうが、急がば回れ。という言葉を信じたかっただけだ。

「まぁ、いいけど」

と、賛同してくれた優奈。少し気が緩んだ顔をした。

道沿いの中に少し広めの駐車場を見つけ、そこに車を止めた。
オンボロの箱バンだが、まだまだ元気そうだった。

久々。ではないが、体を伸ばす。朝日を浴びる。
それだけで生きた心地がした。

「ここってどこなの?えーっと......」
「ハヤトでいいよ」
「それって本名?」
「まぁ、そうなるかな」

意味深に「ふーん」と言う優奈を尻目に、俺は近くにあった表札を見た。

「宇陀馬山だってさ」
「どこよ。それ」
「さぁ、全然分かんね」

優奈に言われたのは一言。
「北に行って。そしたらわかるから」とだけ。
それ以上もそれ以下もないのだ。

だからこそ、俺は目的もなく彷徨っている。
この山を抜ければ隣の県らしいが、そもそも免許だけしかないペーパードライバーの自分が、まともに走れる訳ないのだ。
一種の運ゲーのようなもの。

「風が気持ちいいね」

肩まで伸びた髪を踊らせ、谷から見える景色を楽しむ優奈。
どことなく、その横顔に疑問を感じた。

なぜ、北に行きたいんだろう。
なんの為にそんな所に?
なにがあるんだろう。

その疑問に対して、聞こうとは思わない。
俺の優しさ。と言うことにしておく。

「ねぇ、ハヤトくん。」
「うん?くん付けとはなんとも恥ずかしいなぁ」
「なんで手伝ってくれたの?助かりたいから?」
「まあ、それがでかいよな。だけど......」
「だけど?」

優奈の顔を見る勇気はなかった。
気を紛らわす為花空を見上げながら、言葉を繋げた。

「目を見たときに、なんだか焦った感じだったからさ。助けなきゃって感じたんだ。だから、言葉を信じた。じゃ、だめかな?」

最後まで締まらないなぁ。とは感じた。
だけど、優奈はとりあえず納得してくれた。

「喉渇いた」
「はいはい。何を買いましょうか?」
「コーヒー。甘いやつね!!」
「へいへい」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?