謎タクシー(サスペンス編)

ヘイ!TAXI!!!

 路線バス愛好家風を装っているが、タクシーものる。免許ないから乗せてくれるものには何でもお世話になる。


  バス停でジリジリしながら待っていた。ジリジリの原因は自分の寝坊。  出勤時間ギリギリになりそうで焦っていた。そしてそういう時に限ってバスは来ない。仕方ない路線バスはそういうもので準備が足りない自分が悪い。

 するとある一台の乗用車が停留所付近に停まった。運転手さんが降りておいでおいでと手を振っている。「あ! 一茂(仮名)さんだ!」と思い一目散車に駆け寄り乗り込んだ。

一茂さん(仮名)は前の会社の上司で会社の方向も同じなので、私を見かけて乗せてくれたのだ!ラッキー!!

 あせる私は大喜びで、乗り込み「一茂さん(仮名)助かったぁー!ありがとうございます」と車内ミラー越しに一茂さん(仮名)を見るとそこに映る眼差しは私が全く知らないおじさんだった。  

声も出なかった。

そして車は急発進した。

とんでもないスピード

すみません人違いでした!!降ります!と言ったら、「人違いじゃないよ、俺この前あんた乗せたタクシーのドライバーだよ。今日休みでさ、ちょうどあんた見えてさあ、忘れないよ感じいい人だからさぁ。これからどこ行く?」と言われた。

 泡吹きそうになった

死ぬんでないかと思った

何故今日はコンタクトしなかったんだろうとおもった

一茂さん(仮名)じゃなかった!

全然覚えてないや、こんな人知らない誰だこのおじさん

寝坊した自分を恨んだ

やたらと話しかけられたが、怖くて覚えていない。どこに連れて行かれるのだろうと恐ろしかった。手も足も冷たくなって来た。

このままじゃいけない。

どうにかしなくては。

一人おじさんは喋り続けている

咄嗟に赤信号で止まった隙に飛び降りた。お礼も言わず、お金も払わず行灯のない謎タクシーから飛び降りた。

ずいぶんと昔の事だけど 忘れられない。

遅刻はしなかった。  会社の近くまで乗って飛び降りたから。スピードのおかげで遅刻はしなかった。    会社でこの話をしたら周りから悲鳴があがった。

ただ単に、寝坊してコンタクトもせず人違いして勝手に乗り込んだわたしがバカだったけど

あの自称タクシーの運転手さん、車停めてまでおいでおいでするなんて、あれなんなんだ あの人はどこまで連れてってくれようとしたんだ。 

そもそも誰だよ、あの人。









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