家具を買うひと。[天童木工]
皆さんは天童木工という家具メーカーをご存知だろうか。
天童木工は山形県天童市で1940年に創業した歴史あるメーカーさんだ。
様々な歴史を持つ天童木工だが、特筆して技術が高いのが成形合板。有名なのはバタフライスツールという柳宗理がデザインしたスツール。
天童木工の成形合板は、無垢では難しい3次元の曲げや家具に仕立てた時の軽さが特徴で、高度経済成長期の日本では、様々な大規模建築でも採用されている。搬送性の良さのその理由の一つ。
そんな天童木工の家具を選んだ1人の男性の話。
彼はおそらく20代後半といったところか。私は天童木工のプライチェアが欲しいという相談を受けた。ちなみにこの椅子は沖縄では現物が見れる場所は無いと思う。
有名なデザイナーズチェアでも、どこかで出会って知る機会がないと結構な金額を払って購入する、という若者は少ない。
しかも、プライチェアは剣持勇デザインではあるが家具付きじゃないと知らないくらいには渋めのチョイスだ。
彼に、「どうして、この椅子なんですか?」と聞いた。
ちなみに私は基本的に座った事の無い椅子を売るのは怖いと思っている。やっぱり椅子は座るものなので、座り心地が大事だからだ。
彼はすんなりと、
「偶然流れてきた動画で、成形合板の技術を見て惚れた」と答えた。
偶然だとしても惚れ込んで10万近い椅子を買うのはすごい気迫。この素直さは見習わないといけないとさえ思った。
そしてこれまた、後日一緒に来た彼女も椅子を買うという。
同じく天童木工で、成形合板の、別の椅子。
彼女も、彼が見せてくれた動画と彼のプレゼンで、良い椅子だと思ったから一緒に使ってみたいと言った。
なんて素敵。こんな人達に使ってもらえる椅子は幸せだな。
好きになったものを素直に好きと言える事。
最初のトキメキに正直でいる事の大切さを教えてもらった気がした。
彼らが椅子を買ったのは2年ほど前だろうか。
きっと大切に使われているだろう。
MOMO
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