童話『ちいさいモモちゃん』 『和』の魅力
私の本棚に生まれた時からある作品の中に、松谷みよ子さんの『ちいさいモモちゃん』シリーズがあります。
私自身、何度も母に読んでもらいましたし、我が家の子供達も頻繁に選んでくる、就寝前の読書の定番となっています。
それもあって、シリーズそれぞれの巻の内容もよく覚えているのですが、最近ふと目に留まった文中の子守歌の一節がありました。
ののさまどちら いばらのかげで ねんねをだいて はなつんでござれ
というもので、ののさまは仏様を敬う幼児語ですが、小さい時に耳にした際は、小さな小さな秋の草花をなんとなく想像していたなと思い出しました。
また、夕方から夜にかけての時間帯で外はひんやりしている季節の情景も浮かんできました。
海外にも多く子守歌はありますが、日本語の歌には何となく自然の香りがする気がします。
文章に限らず、こと最近、『和』を再発見する機会に恵まれており、年齢的にもそんな時期なのかなと思っています。
例えば、浮世絵。
先日、ゴッホのThe Immersive Expreienceに行って来ました。VRを使ったゴッホ視点から見た世界の展示や、通常ではなかなか一堂に会しない自画像の数々の展示が大変興味深く、子供も楽しめる仕掛けが多い展示でしたが、浮世絵がゴッホにとって非常に重要な位置付けにあることも大きく取り上げられていたのが印象的でした。
その場で改めて続け様に色々な作品を見ると、確かに浮世絵は、構図、力強さ、色使い等どれをとっても非常に完成度が高く、自然が主役の絵が多い気がしました。
これまで私自身、西洋画ばかり追って美術館を巡っていましたが、改めて浮世絵を含めた日本画を集中して観て行きたいという気持ちがわいてきました。
そして、柘植の櫛。
日本の柘植は、木目が緻密で、硬く粘り強さがあり、耐久性が極めて高い材木なのだそうです。
我が家では私も、二人の子供達も京都の十三やさんの柘植の櫛を愛用しています。
手当たりが柔らかく、軽くて、すっきりしたデザインと、和柄の鮮やかなちりめんのケースも素敵です。
お店には大きさや櫛目が様々の日本の柘植で出来た櫛が売られており、相談すると、髪質に合ったものをお店の方が一つ一つ選んで下さいます。
小さい子供でも問題なく扱うことができ、子供たちは自然に日々、髪をとく習慣が身につき、椿油の香りをかぐとほっとするようです。私の乾燥しがちな髪も艶が復活しました。
加えて、和菓子の包み紙。
最近お目にかかったのは、福寿堂秀信さんの物で、お店で作っている和菓子をモチーフにし、すっきりとした中にも色とりどりの和菓子の華やかさがあります。
普段はあまり物を取っておかないのに、大切に取っており、何に使おうか楽しく考えています。
和菓子の包み紙は、香りの良さもあり、包み紙を開き、箱を開く前に大きく息を吸い込むと、何とも気持ちが落ち着きますし、手触りが優しいです。
そして、和菓子。
もう少し寒くなるとお茶の席に登場する『吹き寄せ』。初めて頂いた時にとても感激しました。『吹き寄せ』は、木の葉をかたどった落雁等の干菓子を何種類か取り合わせたお菓子ですが、木の葉や松葉がひと所に吹き寄せられる様をお菓子に見立てる発想が素敵です。
その他にも、春には芽吹きの喜びを、夏には涼やかに、冬には暖かな気持ちになるような季節の和菓子にうっとりしてしまいます。
私にとっての和の魅力は、身近な自然を大切に思う視線と、使う人への気遣いが感じられるところにあるのかな等と考えています。