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カラスはけっこう人気者?#1 からすたろう 八島太郎
[カラスはけっこう人気者?]カラスシリーズ全4回はじめます
今日はその第一回です。
八島太郎は「からすたろう」「あまがさ」「海浜公園」
(3作ともコールディコット賞次席受賞)の
児童作家である。私は長いこと
彼の作品に流れる寂しさに心惹かれてきた。
彼を日系米人だと思っていた。
前回紹介した「反戦平和に生きた人びと」で
「蟹工船」の小林多喜二のデスマスクを描いが
八島太郎であったことを知った。
もっと知りたいと
「八島太郎」(野本一平)
「あたらしい太陽」(八島太郎)を読んでみた。
絵本を書き始めたのは、米国に亡命後だったが、
素材はいつもふるさと鹿児島であった。
人間愛あふれえる作品ばかりである。
米国籍を生涯取らなかった。
※からすたろう 八島太郎
ある山間の分校に 山奥から通う少年がいた。
クラスの仲間から無視されたり、いじめにあって
きた彼であったが、毎日休まず分校に通っていた。
いつも一人で、毎朝早くに家を出て、夕暮れに家に帰る。
来る日も来る日も カラスの鳴き声を友に
山道を一人歩いて通っていた。
新しく赴任してきた先生は、からすたろうに
愛を持って接し、少年の傷ついた心を開いてくれた。
6年間通った卒業の時 先生はからすたろうに
カラスの色々な鳴き声を発表させた。
聞いていた人たちは、からすたろうの寂しさに
思いを馳せ、涙を流し、心を寄せた。
作者の八島太郎は、「からすたろう」を
生き生きと描き、カラスの鳴き声が深く心に染み渡る。
幼子にゆっくり、たっぷり読んであげるのも
いい。きっと 親子の至福の時になると思う。
子どもはひとりでいる時 内面は活発に動いている。
そういうことに気づかせてくれる一冊だった。