狩人。
男性は、狩人だと聞きます。
女性を獲物のごとく追いかけ、追いかけ、獲物を捕えるまでは、本気でこれでもかと言うほど一生懸命。
でも、狩ったあとは、興味がなくなる。
あの人は、典型的な狩人でした。
LINEで、あれやこれや下ネタをくりだしながら、「会いたい」「会おう」「いつなら会える?」
「昼休みの時間でもいい」などなど。
正直、こちらがひいてしまうほどの勢いでした。
もちろん、夫がいる身で、男性と2人で会うなんてもってのほか。今までの人生で培った、様々な、かわしテクニックを駆使し、(本当にか?!)軽くあしらっていたつもりでした。
が、
それが、狩人に火をつけたのか、あの人は、益々ヒートアップ。
そしたら、だんだん、心の中に留めていた気持ちが、フツフツと表に出てきてしまい。
「いじわるですね」
そんな返事をしてしまいました。
あの人に、私が落ちた瞬間ですね。
それから、あの人の猛アプローチに負け、初めて仕事終わりの時間に会うことになったのです。
その日は、警戒心を120%持ち、マスクを装備し、出かけていきました。
あの人の車の中での密会だったのですが、コーヒーは飲めなそうだから...と、ペットボトルのカルピスを買ってきてくれ、まず、すごく嬉しかったのを覚えています。
でも、とにもかくにも、あの人が私に何か買ってきてくれたのは、このカルピスが最初で最後。思い出のカルピスです。
その日は、すべてにおいて、奪われてはいけないと、完全にガードを固めました。
それが、また狩人の狩猟本能に火をつけたのか、その3日後、どうしても会いたいと、あの人は仕事を半日で切り上げ、私に会いに来たのです。
もうどうなってもいい。
その時、私の中の何かが変わった気がします。
私は、この人のことが好きなんだ。
この人と一緒にいたいんだ。
私は、あの人の全てを受け入れる覚悟を決めた日。自分の心に正直になろうと決めた日。
でも、私のあの人に対する強い想いとは裏腹に、狩りを終え、私の心をものにしたと分かったあの人は、いろいろな事情が重なったこともありましたが、狩り場から、一旦、スっと姿を消していったのですが。
あの人は、根っからの「狩人」
...だったのかもしれません。