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the pillowsが解散した、忘れたくない日の記録
昨日のライブ後は、忘れてはいけないという気持ちと、何かから目を背けたい気持ちがあった。
アルコールのせいなのか眠りが浅くて、寝たり起きたりを繰り返しながら、気が付いたらお昼前になっていた。
スマホを開くと、一番見たくなかったメールが届いていて、すぐにスマホを閉じた。
涙は出なかった。
永遠に続くものなんてなくて、いつかなくなることをもう知っていたから。
しばらくの間、目を閉じてたくさんの景色を思い出していた。
はじめて出会った実家の部屋。
はじめて買ったCD。
そのツアーで行ったはじめてのライブ。
30周年の横浜アリーナ。
35周年の豊洲PIT。
そして、昨日のライブ。
他にも、たくさん、ほんとうにたくさんの思い出がある。
出会ってからおよそ20年。
人生のほとんど全部だった。
◆
息の仕方を忘れて、このまま部屋にいてはいけないと思った。
外に出て、あてもなくひたすら歩いた。
イヤホンからは爆音で音楽が流れている。
歩いている途中で、昔付き合っていた人から「大丈夫?」と連絡が来た。
曲とともに当時の思い出が蘇って、視界がぼやける。『ジョニー・ストロボ』が流れていた。
3時間歩いて、5年ほど前に住んでいた街に着いた。
当時開発中だった駅前は、商店街がなくなってすっかり様変わりしていた。
河川敷には、スケボーの広場や、小さなバーベキュー場ができていたりして、景色が変わっていた。
変わらないものもたくさんあった。
引っ越し初日に水道が使えなくて歯磨きをした公園。
まったく開かない踏み切り。
行くたびにサービスしてくれたインドカレー屋。
夜中にアイスを買いに行ったコンビニ。
たしかにそこには幸せがあったんだ。
ことあるごとに、「記念だからいいよね」と言ってよく買っていたケーキ屋が、隣の駅に出来ていた。
ぼくが今まで食べた中で一番好きなモンブランだった。
疲れたので、モンブランといちごタルトを買って帰ることにした。
帰ってから食べたモンブランの味はあの頃のままだった。
変わらない嬉しさと、失ったものの悲しみを噛み締めながら、ゆっくり食べた。
◆
35年間、音楽を鳴らし続けてくれて、ありがとう。
夢なんてない退屈な日々で、それでも明日には何かが変わるかもしれないと、もがいていた10代の毎日も。
『パトリシア』みたいな彼女と過ごして笑って泣いて抱き合った日々も。
人生に迷って、大切なことを見失ったときも。
ピロウズの音楽は、いつもそばでそっと背中を押してくれて、進むべき道を光となって照らしてくれた。
ピロウズの曲たちを、宝物として大切にできる人生でほんとうに良かった。
そしてそれは、これからも変わらないだろう。
何も諦めずに信念を貫き続けてきたバンドだった。
その姿に憧れていた。
だから、ぼくもまだ、自分の人生を諦めない。