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33 カラスの世界観(4)

誰もがみんなカミサマを持っている?

『人間は欲張りなんだよ。何もかも自分の物にしようとするだろう。空にお日さまがあって地面に住処があって木があって湖があって そしてエサがある。そういう物を全部カミサマが目の前に広げてみせてさ やれるだけの事をしながらみんなで分け合えよって言ってるんだ。まあ早い者勝ちってことなんだけどさ。生き物なら誰でも知っている立派なルールなのに人間だけがそれを知らないんだよ。お前カミサマって知ってるか。』
『えっと 名前は聞いたことありますけど会ったことはありません。』
『誰もがみんなカミサマを持ってるんだ 自分の身体の中にな。見えないし何をしてくれるわけでもないけど 生きてる限りはそばにいてくれるらしいぜ。』
『見えないってことは いないのと同じなんじゃないですか。』
『それはさあ ユーㇾ―とか宇宙人とかと同じでさ いないよりはいた方が世の中絶対面白いだろう。そういう類の物なんだよ。』
『えっ そっ そういう物なの。それじゃわたしの体の中のどの辺にいるんですか そのカミサマっていうのは?』
カラスは溜息をつきながら投げやりな言い方をしました。
『何でも聞きゃあいいってもんじゃないだろう。そのくらい自分の頭で考えろよ。さてと そろそろ仲間達との情報交換の時間だから 行くとするか。』
『あっ ちょっと待って 名前を教えて!』
『何を言い出すかと思ったら、嫌になっちゃうな。お前はさ人間に飼われているから名前なんてものを必要とするんだよ。そんなものなくたって別に困らないだろう。』
『そんな事ないですよ。名前があれば、話しかける時も、思い出す時も、心配してあげる時も、すぐに誰のことかわかるでしょ。』
『それがどうしたって言うんだよ。』
『どっ どうしたって・・・つまりそういうのが知り合いであって 仲間であって そうですよ それが・・友達なんじゃないかな。
アッ そうだ 昔はカミサマのお使いだったって言ってたでしょ。確かあれは ヤタ・ガラスとかいうんじゃなかったかな。だからヤタロウという名前はどうですか?』 
カラスはちょっと目をパチクリさせてからこう言いました。
『別にそう呼びたきゃ、呼んでもいいけどさ。じゃあな!』
ヤタローはくるっと背を向けて、そのまま飛び立って行きました。気に入ってくれたのかな 何だかその後ろ姿がちょっと照れてるみたい。


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