26 運命の時
黒い子犬はどうなる?
アキ子さんが晩ご飯の支度をしている間 シンちゃん カコちゃん ジュン君達は子犬の頭や身体を優しく撫でたりさすったりしながら遊んでいます。子犬は足に力が入らないらしくてヨタヨタしています。それでも子供達にじゃれつくようなしぐさをし始めました。
玄関からお父さんの ただいまの声が聞こえてきたのはその時でした。ジュン君は急いで玄関に駆けて行き お父さんの手を引っ張って 早く早くと言いながらリビングに向かいました。そしてリビングにお父さんが入ってきたその時です。
子犬のとった行動を見たこども達は 驚いて目をまん丸にしました。
だってね あのヨタヨタしていた子犬が箱の縁に手をかけてしっかりと足を踏ん張って立ち上がってるの。箱から顔だけ出してお父さんに向かってしっぽを思い切り振っているの。学校では見たことがないくらい凄く嬉しそうにいっぱい いっぱいしっぽを振っているの。しかもこのやせっぽちの身体からどうしてこんな声が出るのかと思えるほど大きな声でお父さんに挨拶をしているの。
『おや 我が家の新しい住人か? 名前は何ていうんだ。』
『えっ お父さん この子うちで飼ってもいいの。』
『いいよ。だってこの子はお父さんの方を向いてこんなにしっぽを振ってるんだよ。それにお父さんには聞こえたよ、このうちの家族にして下さいって言う声が。』
確かにこの時 この子犬は全力で自分の気持ちを伝えていたに違いありません。
こうしてこのやせっぽちの子犬はアキコさんちの家族の一員になったのです。